「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

高齢者が取り組む住み良い地域づくり・くらしづくり・ひとづくり活動
神奈川県横浜市瀬谷区 NPO法人楽竹会
プロローグ:NPO法人楽竹会誕生の背景

 60歳定年を控えた平成6年ごろ、楽竹会設立の提唱者の一人は企業戦士に別れを告げて終の棲家の地で地域づくりに挑戦する準備を始め、定年後の生き方に関するセミナー受講や多様な情報を貪欲に吸収し現状把握に努めた。その結果得られたのは、①少子高齢化社会の到来、②地方分権の流れ、③地球温暖化・自然環境破壊、④情報化時代等の課題だった。これら課題に対応した高齢者の生き方を模索するために平成6年から平成14年にかけて、①シニア対象の勉強会開催 ②森や水辺の愛護会入会 ③瀬谷区まちづくり区民の会に参加 ④横浜市立南瀬谷小学校外部協力委員等、多面的な地域づくりの実践活動に参加し、一部を除き現在も実践活動を継続している。
 これら実践活動を通じ、①町内会・自治会の上意下達の社会システムが現存していること ②既存の社会システムが地域活動への新規参入者を阻害するケースがあり、参加できない高齢者が多数いること ③既存の社会システムだけでは充足できない隙間・課題が山積していること ④放置された荒廃竹林・樹林が地域に点在していること ⑤地域の課題解決に自主的に取り組む動きが出てきたこと ⑥子どもの教育は学校任せでなく、父兄も積極的に参加しようとの動きがあること ⑦高齢者施設の建設ラッシュが続いていること等々、地域には課題が山積していることを知ることができた。


NPO法人楽竹会の活動概要

 上述した課題解決の一端を担うロマンを心に秘めて、平成14年1月に10余名の仲間で、「現役時代に培った知識・経験を地域の自然環境保全の実践活動に活かして未来に引き継ぎながら第二の人生を謳歌する」ことを活動理念として楽竹会を立ち上げた。
 地元地権者のご理解・ご協力を得て、活動の原動力となる拠点・フィールドが確保できたことから竹炭焼き専用窯場を設置して活動がスタートした。
 3年後に神奈川県のNPO認証を取得することを目標に掲げ、試行錯誤を繰り返しながら神奈川県民活動サポートセンター、横浜市「市民活動を応援する助成金」、セブンイレブン「みどりの基金助成金」等から活動資金のご支援をいただき、平成17年3月に念願のNPO法人の認証を取得することができた。
 活動内容は、設立当初掲げた「地域に点在する荒廃竹林・樹林の整備再生」を軸にしたコア事業が柱であったが、実践活動を継続する過程で活動分野が広がり、文字通り点―線―面への展開を経て今日に至った。
 以下、活動分野(4事業部門)の概要について述べる。
①自然環境保全活動
 地域に点在する荒廃竹林・樹林の整備再生の現場作業が中心となる。作業の安全性・間伐竹の効率的処理を考慮して、ハンドリング容易なキャタピラ方式の専用シュレッダーを購入した。350万円の代金は会員有志がささやかな年金の中から出し合って調達した。
(1)竹林整備で発生した間伐竹を粉砕して野積み放置したチップの山から1500匹のカブト虫の幼虫が生息しているのを発見、幼虫は小学校・沿線駅の構内・その他でプレゼントした。このことが隔月刊誌「人と国土21:第32巻第6号」(国土交通省編集)に「今に生きる竹取物語」と題して4ページにわたって紹介された他、「NHKラジオ夕刊」による全国放送、各種マスコミ紙に取り上げられた。
(2)平成21年の台風第9号被災地の兵庫県佐用町に被災地復興用廃棄汚泥悪臭対策用に竹炭を提供、佐川町長様よりお礼状を拝受した。
②地域密着型学校教育(環境学習)活動
 総合学習の一環として、複数の小学校・キッズクラブ・高校等とひょうたんの栽培・加工、粉砕チップの堆肥化の実験指導、竹工作の指導等のサポーター役として参画している。
③高齢者福祉社会の創生活動
 数ヶ所の高齢者施設の関係者の皆さんと連携して、利用者を対象に心身機能の活性化を目的に創作「竹琴太鼓」による訪問演奏活動を毎月実施している。
④地域の自然環境を基軸にした協働事業の展開
 瀬谷地区は、横浜緑の北の拠点(約700ha)に接し、市民の森(19ha)、農業専用地区(92ha)、上瀬谷通信施設返還跡地(242ha)等の首都圏最大の巨大空間資源がある。
 これの再生事業を会員有志仲間が推進役の一端を担うロマンを求め、自治会・町内会・各種団体・学校・行政・NPO・地域住民等と連携して「ヨコハマ市民まち普請整備事業」に応募した。瀬谷区内で平成19年より3年連続して申請事業が、すべてパスする快挙となった。
 本事業は、整備完成後5年間継続して活動に取り組むことが義務づけられていることから、新しい視点に立った地域づくりが展開されることになる。
1)平成19年度:「境川沿いと鎌倉古道沿いに桜の名所づくり」(250万円)
2)平成20年度:「高齢者こども等が農体験で交流する場づくり」(500万円)
3)平成21年度:「樹林と湧水を活かしたホタルの里山づくり」(500万円)


活動の成果(平成21年度事業報告より)

①自然環境保全活動(竹林及び樹木の間伐と粉砕処理及び資源循環化)
(1)竹林整備再生と粉砕処理活動
・内容:点在する荒廃した竹林と、県立瀬谷西高校「思索の森」の整備再生と専用シュレッダーによる粉砕・堆肥化処理作業の実施
・時期:平成21年4月~平成22年3月の毎週月・水・金曜日
・場所:瀬谷区内4ヶ所、泉区1ヶ所
・参加者人員:延べ122名/18回+その他多数参加
・対象者:会員、学校関係者、PTA、地元農家、竹林所有者、企業
(2)竹炭焼き・竹酢液の採取・竹工芸作品の制作
・内容:間伐竹を材料に専用窯を使用した竹炭焼き・竹酢液の採取、くん煙処理専用窯を使用した竹工芸作品の制作
・時期:通年 毎週火曜日・木曜日に実施
・場所:横浜市瀬谷区阿久和南
・参加人員:延べ1000名/91日
・対象者:会員、小学生、幼児、一般市民
(3)作品の展示及び福祉施設への提供
・内容:制作した作品を各所で開催されるイベント会場にて展示
・時期:通年(随時)
・場所:横浜市内各所(7会場)
・参加人員:延べ200名
・対象者:会員、一般市民、福祉施設関係者
②地域密着型学校教育(環境学習)活動
・内容:ひょうたんの栽培・加工・展示会への出展、カブト虫の飼育、
竹工芸品制作、餅つき大会、成果発表会
・時期:通年
・場所:竹林、樹林、窯場、小学校、和泉川の流域、畑、地区センター
・参加人員:延べ2000名
・対象者:会員、小学校、高等学校、キッズクラブ、老人クラブ、地元地権者
③高齢者福祉社会の創生活動
・内容:創作「竹琴太鼓」による各種福祉施設への訪問演奏活動
・時期:通年、4~5回/月
・場所:ケアプラザ(4ヶ所)、保育園、ふれあい広場、児童公園他
・参加人員:延べ600名以上
・対象者:会員、各施設居住者・利用者、一般市民
④地域の自然環境を軸にした協働事業の展開
・内容:ヨコハマ市民まち普請整備事業(平成19・20・21年度)、その他各種外部団体との協働事業
・時期: 通年
・場所:神奈川県下、横浜市内、瀬谷区内他
・参加人員:延べ2500名
・対象者:会員、各種団体、自治会・町内会、地権者、行政、市民


まとめ

1 実践活動を支える柱(キーワード)
①活動理念 ②信頼関係 ③活動拠点 ④活動資金 ⑤幅広いジャンルでやさしい技術の蓄積(ひょうたん栽培・加工、チップ材の堆肥化、カブト虫の飼育、竹工芸品の制作、竹琴太鼓の演奏、カワニナ・ホタルの飼育) ⑥協働・公共のこころ ⑦地道な実践活動
2 活動を支えるバックボーン
 波 紋
静かな池に小石を投げよ
まるい波紋が 大きくおおきくひろがって
どこまでも延びてゆく
人間の考えも行いも 善悪ともに
ひとたび動いた心の波は 永遠にのびてゆく
時間をこえ、空間をこえて 無限にひろがってゆく
正しい波、悦びの波の源をつくれ
          (後藤靜香)