「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
常盤平団地における「地域づくり」 |
千葉県松戸市 常盤平団地自治会 |
はじめに 常盤平団地の管理戸数は5359戸。昭和35年4月1日に団地入居を開始して以来、半世紀を迎えている。 入居当初の団地人口はざっと1万5000人で、高齢化率が0%。団地内の住民は30代の若い人たちに占められていて、活気に満ちていた。 50年を経た現在の団地人口は外国人を含め約9000人。高齢化率は38・4%。子どもの数が減って高齢者が多くなるという少子・高齢の典型的な団地といっていい。 地域づくりの経緯と実績 団地入居がはじまって、2年後の昭和37年3月25日、団地自治会は結成総会を開催。それ以来、団地における地域活動はつねに団地自治会が推進役を果たしている。 自治会主催の恒例の行事などの催しものは以下の通り。 1.新年合同賀詞交歓会(1月) 2.常盤平さくらまつり(4月) 3.常盤平けやきまつり(5月) 4.健康福祉フェア(6月) 5.団地クリーン作戦(7月) 6.夏まつり盆踊り(8月) 7.敬老の集い(9月、団地社協と共催) 8.スポーツフェア(10月) 9.ふれあいもちつきフェア(12月) 10.孤独死を考えるシンポジウム(12月) 「団地50周年」に当たり、団地自治会は団地50周年記念事業「7つの実行プラン」と「まちづくり5つの夢宣言」を策定し、地域づくりに努める目標を定めたのだった。 7つのプラン 1.「健康長寿」モニュメントの建立 2.常盤平団地入居50周年記念誌の発行 3.「あいさつ」推進標語の普及 4.常盤平けやき通りクリーン作戦を展開 5.常盤平団地中心市街地の活性化に努力 6.団地内のゴミ置場設置 7.鉄製窓枠のアルミサッシ化 5つの夢宣言 1.大規模宴会場つきホテル建設 2.常盤平駅北側地区の再開発(車歩道の整備など) 3.団地小学校の統廃合による、福祉施設または文化施設の建設 4.住民本位の常盤平団地再生長期構想検討 5.新京成線常盤平駅←→八柱駅の間に新訳の設置 地域づくりの実績 1.「孤独死ゼロ作戦」の全国展開 「思いやり 福祉の心で まちづくり」を標榜して団地社協(正式名称・常盤平団地地区社会福祉協議会)を結成したのが平成8年12月8日。その5年後に「孤独死して3年後に発見」「こたつに伏して4ケ月」という痛ましい孤独死と向き合う。 団地自治会と団地社協が協力しあって対策にのり出して現在に至っている。 おもな取り組み課題は次の通り。孤独死110番、孤独死を考えるシンポジウムの開催、市に孤独死の実態調査を要請、新聞販売店と協定書、あんしん登録カード、まつど孤独死予防センターの設置、孤独死ゼロ作戦の策定、地域の合い言葉を策定、厚生労働大臣へ陳情、いきいきサロンを開設、サロン見学への対応(3年間で146回)、「中沢報告」(6年間で129回)といったように、次々と手を打ったのだった。 このような経験をさらに生かして、この3月13日にNPO法人孤独死ゼロ研究会を設立。その結果、団地内の孤独死も減少し、孤独死の場合、「3日以内に発見」するようになっている。 孤独死防止から学んだことも数多い。例えば「死は生のカガミ」といった死生観、「孤独死は生活習慣」を実感。孤独死を地域福祉の重要なテーマととらえて対応するなど貴重な経験を重ねることとなっている。このような先進事例の取り組みが全国的に注目されているといえる。 2.「幸せを呼ぶ健康長寿」碑の建立 「7つの実行プラン」のうち「幸せを呼ぶ健康長寿」碑については、平成22年5月15日、常盤平支所前に建立(「健康長寿」の書は当時の松戸市長から書いていただき、団地住民からの協賛金150万円、松戸市から40万円を拠出。石はインド産黒御影石)。この碑を中心に団地散歩道というウォーキングコースをつくっている。 このほか「団地半世紀」の間、団地自治会が企画し実施主体となって「地域づくり」に努めた実績は以下の通りである。 3.常盤平駅前ロータリーに3本柱の時計塔を建立 「団地20周年記念事業」。この時計塔は「地域」と「行政(市)」と「公団」が協働して、発展の時を刻むという主旨で建立。 4.常盤平支所前に「親子の像」(和)建立とけやき通りに2基の標語塔を設置 「団地30周年記念事業」。「和」の文字は当時の松戸市長の書。住民の協賛金200万円、松戸市800万円を拠出。 5.鳥瞰図『松戸町、明村』(松井天山作、高級ステンレス判、タタミ大の大きさ)を松戸市に寄贈 「団地35周年記念事業」。この高級ステンレス判の作品は現在、松戸市民会館2階に掲示されている。 6.さくらの苗木100本、松戸市に寄贈 「団地40周年記念事業」。これをきっかけに、団地内のさくら通り(日本の道100選に指定)の老木を伐採して、さくらの苗木を植え、さくら再生に努めている。現在、毎年開催している、常盤平さくらまつりの際、常盤平環境会議が中心になって、さくら再生募金を行なって、募金4~50万円を市に寄付して、さくら再生に努めている。 7.自治会が「団地50周年記念誌」『ふるさと常盤平』を発刊 「団地50周年記念事業」。常盤平団地過去・現在・未来を直視して編集。団地全戸に配本したほか、学校、図書館、行政、団体等に配本へ。 8.常盤平地域の伝説「子和清水のベンチ」を新設 平成22年8月10日、常盤平けやき通りに「子和清水のベンチ」を設置し、「子和清水の森」にわき水再現を実施。「よみがえる子和清水」に努める。 9.団地内ゴミ置場の新設 団地50周年記念7つの実行プランのひとつ。従来の手づくりの、古くなったゴミ置場に代えて、新しいゴミ置場の新設をUR都市機構に要請、実現へ。平成23年度末までに、全団地で新設へ。 10.ベランダ側引き戸のアルミ化も計画実施へ 平成23年までに団地全戸を対象に実施へ。 11.自治会報『ときわだいら』47年間、毎月発行 自治会報『ときわだいら』は平成22年8月号で「第575号」を数える。同会の会報は、地域コミュニティの再生はもとより、「地域づくり」に欠かせない宣伝、伝達の手段となっており、「地域力」づくりに貢献している。 12.大学と自治会が提携 県内の淑徳大学と団地自治会が提携調印式(平成22年4月9日)を行なって、団地の催し等に同大の大学生を受け入れ、実地体験を行なっている。「実地に強い学生」をめざす。 13.NPO法人孤独死ゼロ研究会を設置 平成22年3月13日、これまでの孤独死ゼロ作戦の取り組みを踏まえ、団地自治会、団地社協を母体にNPO法人孤独死研究会を設立。8つの事業の推進に努めている。 学んだこと(教訓) 以上、13項目の取り組みの実績から学んだことは以下の通りである。 (その1)地域づくりには「継続的な努力なしに特効薬なし」、を学ぶ。 (その2)「地域」という文字は同じであっても、地域はみな違うことを知る。従って地域特性を生かすことが肝心。 (その3)「キッカケを大切に」。とかくキッカケを見逃すことが多い。キッカケを大切にして、それを見逃すことなく、キッカケをチャンスに変えることの大切さを知る(孤独死ゼロ作戦の取り組みが好例)。 (その4)「地域づくり」は冷静に、計画的に、着実に行動することであり、地域住民の目標を明確にして、地域の暮らしと文化に貢献することの大切さを知る。 (その5)「地域おこしは個人おこし」。自助、互助、公助を踏まえて「個人として、努めることを常に明確にする」ことにより、全体の力になることを知る。 (その6)「地域のまとまり」が地域づくりのもとになるを知る。 (その7)「地域を愛する」「地域を育む」「地域の目標」をつねに明確にすることにより地域づくりの原動力となるを知る。 (その8)地域というのは、「ささえ合う」「見守り合う」が基本であることを知る(これがおろそかになると、高齢者不明とか、孤独死等を生むことにもなる)。 (その9)昼間の地域は「婦人が主役」を知る。 (その10)「孤独死ゼロ作戦」の取り組みを通して、①孤独死も「高齢者不明」の問題も根っこは同じを知る。②あいさつという声かけ、仲間を大切に「向こう三軒両隣」、「おすそ分け」といった誰でも実行できることが人と人をつなぐ第一歩を知る。 (その11)「地域は生きている」を実感。努力すればよみがえるを知る。 以上の通りであるが、これからの地域づくりの基本は「地域住民の幸せづくり」のためにも「地域の目標を明確にする」ことが肝心である。 |