「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

「アドベンチャープレイパーク事業」と「昔あそびの出前授業」を通しての子どもの健全育成事業の実施
埼玉県川口市 川口市プレイリーダー協議会
子どもを取り巻く環境の変化と子どものすがた

 都市化が進み高層住宅が増加するに従い、木々の緑が少ない昔からの自然が失われた街、そして、家庭は父・母・子の少子化による核家族化や母子・父子家庭の増加など子どもを取り巻く環境は、子ども本来の成長にとって必要な親兄弟とのコミュニケーションが取りにくい状況となっている。
 一方、核家族化や母子父子家庭の増加等の社会変化がもたらした「子どもを育てる目」は、過保護による甘やかしと放任による無関心との両極端に分かれる状況がみられる。過保護に育てられた子どもは、日常行動(あそびを含めて)への挑戦、成功、失敗の体験ができず、「我慢すること」を教えられない子どもはほんの少しの挫折にも傷つくことになる。放任による親の無関心からの子どもは、常に精神的に不安定な、そして親に甘えることのできない寂しい状況で毎日を過ごし、感情形成が乏しい子どもになっている。


今の子どもに必要な「生きる力」を育むための「あそび」の重要性

 子どもの成長にとって、日常の社会生活を営み助けられながら活動し、多くの人たちとの関りを持つことによる育みが必要である。
 子どもの生活活動のなかで、成長の糧となり子どもにとって大切なことは、「ありのままの自分を受け入れてもらえる場所が確保されていることが望ましい」と言われている。子どもの成長を実現させるために有効なものが「あそび」であり、「あそび」は、子どもの本能的な欲求である。
 「あそびを十分に展開させること自体が子どもの自我の健康な発達に大きな意味をもつ」、あそびを通じて「恐れずチャレンジすること」「協力や工夫が成功のカギになること」「やり遂げたあとには感動が待っていること」を学び、それを繰り返すことで「生きる力」を養うことができるのである。
 子どもの「生きる力」を養うことの大きな要素が「あそび」に含まれているのである。


「あそび場」としてのプレイパーク事業

 私たち、川口市プレイリーダー協議会は「あそびを通して子どもの好奇心や冒険心を刺激し、自ら創り出す喜びや仲間づくりの楽しさを伝えるあそびのボランティア活動員」プレイリーダーの集まりであります。
 子どもたちに必要な「やりたい」「やってみたい」という自由で自発的な遊びを実現できるような場所で、さまざまな人と関わり合いながら、さまざまな経験をし、将来社会に出たときうまく生きていける力(社会力)を身につけることのできる場として、プレイリーダーが常駐している「冒険遊び場」としてのプレイパーク事業を実施している。冒険遊び場としてのプレイパーク事業は、子どもたちが「自分の責任で自由に遊ぶ」ことができ、五感を十分に発揮し興味に応じて自分で創意工夫し、チャレンジできるよう、お父さん・お母さんと子どもとが一緒になってあそぶ子どもたちや、一人あそびの子どもの手助けをしながら子どもと一緒になったあそびを行なっている。
 特に、毎土曜日には、竹・木・紙工作、ペットボトルロケット・紙飛行機・クニャクニャたこの製作、ネイチャーゲームを、ベーゴマ・けん玉・竹馬などの伝承遊び等を内容を変えながら行なっている。時には、ベーゴマ大会・けん玉大会など子どもたちのチャレンジ精神を育められればと、プレイリーダーも一緒になって行なっている。
 製作物では、完成見本品を見ながら自由な発想での加工を加えた製作物ができるようにアドバイスをしたり、材料の切り込みを手助けしたり、怪我をしないよう注意・眼を配らせながら行なっている。また、のこぎり等の道具の使い方などを教えることも必要となる。
 また、プレイパークでは、道具を使うあそびばかりではなく、土曜活動として、幼児や低学年の子どもを対象にした「お話会」「絵本の読み聞かせ会」「パネルシアター」等を自然に恵まれた公園内の木々の下で行なっている。
 家庭内で味わえないあそびをすることを楽しみに来園される子どもたちを見るとプレイリーダー活動冥利と感じることができる。
 数々のあそびを一緒になって行なうことにより、子どもたちとのコミュニケーションがとれ、子どもの成長ステップの手助けになっていると確信しております。
 子どもたちにとって、普段の生活の中で経験できないことを経験できるのが、プレイパークであり、群れあそびや大きな子・小さな子が一緒になってあそぶことができ、プレイリーダーがいることによる「安心感」があることが、冒険遊びのできるプレイパークの良いところではないでしょうか。
※活動実績
事業年度 プレイパーク利用者 お話会等の参加者
平成18年度 32,489名 307名
平成19年度 30,043名 156名
平成20年度 34,180名 308名
平成21年度 33,087名 223名


地域の子どもへ「あそび」を拡げるために

 地域の子どもは、地域で守り育てる。子どもの「生きる力」は、学校だけでなく行政とともに地域全体で育んでいくことが必要である。
 学校と地域との連携体制の一環として、川口市プレイリーダー協議会は、あそびによる子どもの成長を育むために「あそびを知ってもらい、地域の子どもたちとの輪を広げ、外でみんなと群れて遊んで、人としての大切なことを学ぶ遊びを拡げる」ことを方針として、「ベーゴマ・こままわし」「けん玉」「皿回し」「竹馬」「お手玉」等の昔遊びを知ってもらい、昔遊びを伝えてもらうことを学校及び地域の人たち(主に親子)と一緒に進めるために、学校及び町内会のイベントに「あそびの出前」を行なっている。
 特に、小学校へのあそびの出前は、総合学習授業に合わせ実施している。あそびの出前は、限られた時間・限られたプレイリーダーにより行なわれているが、あそびの出前の件数も年々増加し、子どもたちの「手作りの遊び」に対する関心の高まりと、プレイパークでのあそびへの参加意識を高めることができている。学校での「あそびの出前」は、帰宅後の親子のコミュニケーションの手助けとなり、さらに、親子で一緒に公園であそぶチャンスの提供にもなっている。
 また、町内会の親子子ども会・町会イベントヘの「あそびの出前」では、昔あそびの道具を準備し昔あそびを始めると、親たちが昔を思い出し、子ども以上に夢中になって、懐かしさと子どもとともに楽しむことよる親子の会話の懸け橋になっている。
 親も一緒にあそび、子どもがあそびに興味を持つことは、さらに子どものあそびへの興味を膨らまし、次から次とあそびの幅を広げていくことになる。
 子どもの「生きる力」は、このあそびにより育まれ、親子・地域の人だちとの関わり合いによる「社会性」をも、間違いなく高めることが可能となる。
 川口市プレイリーダー協議会は、学校や地域との連携を深め、さらなる「あそびの出前」を増やし、あそびの効用を広めるために、行政の協力を仰がざるを得ない。限られた時間、限られたプレイリーダーによる「あそびの出前」を広く、効率よくさらにたくさんの回数をこなす必要がある。そこで「あそびの出前」の要請にできるだけ多く応えられるよう、学校や町会等からの申し込みの手順をルール化【プレイリーダーによるあそびの出前についてのご案内】を基に、川口市福祉部子育て支援課の支援を受け、申し込みの受付・プレイリーダーの配置等の運営がスムーズにできるようになり、「あそびの出前」は順調に回数を増やしている。
 学校や町会等の地域住民から川口市プレイリーダー協議会へ「あそびの出前」活動に感謝をいただき、プレイパーク事業への参加協力を頂けるなど、地域等との連携がさらに深まりを増している。
※出前の実績
事業年度 学校への出前回数 地域(町会)への出前回数
平成18年度 3校 3箇所
平成19年度 5校 5箇所
平成20年度 11校 5箇所
平成21年度 9校 7箇所


健全な子どもの育成を図るさらなる活動の推進

 子どもを取り巻く成長環境が、子どもにとって良から悪へとの変化が激しくなるばかりである。この状況のもと、子どもの「生きる力」を育むことができる「あそび」を推進しつつ、子ども本来の欲求や行動が子どもの発育に応じてどんどん変化していくものであり、その変化に応えられる活動が「プレイパーク事業」と「あそびの出前」である。
 冒険遊び場としての「プレイパーク事業」の推進と学校や地域への「あそびの出前」の実施による親子や地域の住民のあそびへの関心の高まりは、現代から将来に渡って、あそびが子どもたちの心の中に大きく残っていくものと思います。
 私たち、川口市プレイリーダー協議会及び会員プレイリーダーは、これらの活動を続けることが、〔大人から子供への「夢のプレゼント」となること〕を願い、活動を続けている。