「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

お互いさまの気持ちで助け合い活動―共生のある地域社会―
栃木県佐野市 NPO法人まごの手
 栃木県佐野市小中町。足尾銅山鉱毒事件の告発者として有名な田中正造の生家近くに、まごの手の事務所があります。まごの手は、お互いさまの気持ちを大切に、生きがいが持てる・安心して暮らせる地域社会をめざして、助け合い活動を行なっています。事務所は車イスカーペンター治田さんの一部屋を借りています。(治田さんはまごの手立ち上げの一人です)玄関には、治田さんお手製のまごの手看板が掛けられ、私たちを見守っています。


まごの手の立ち上げのきっかけ

 代表の小暮は大学卒業後、知的障がい者の養護施設などの障がい者・障がい児施設、介護老人福祉施設、南福祉の家などで働きながら、制度の中では当事者や家族が大切にされていない(当事者の自己実現に制限がある、家族は問題を抱え悩んでいる)と感じていました。また、自身の子育て中、助けてほしい時にどこに頼んだらいいのか分からず、とても不安になりました。この体験が、まごの手を立ち上げるきっかけになりました。


助け合い活動の始まり―制度だけでは解決できない!―

 隣人の様子が大変だと知っていても、生活深くまで関われない。つながろうと手を伸ばさなければつながらない。見守りから次の支援へ、つなぐ仕組みが必要です。また、誰もが助け合いの必要性を感じ、大切だと知っています。しかし、思っているだけでは解決しません。まごの手を立ち上げた代表の小暮、車イスカーペンター治田さん、ケアマネジャーのNさんは、当事者の気持ちを理解し、当事者の立場に立てたからこそ、助け合い活動を始められたのだと思います。治田さんが通院先の病院で、患者家族に参加を呼びかけ、自然発生的に活動がスタートしました。あれからもうすぐ10年目を迎えます。(Nさんは現在、他の介護事業所で活躍中です)制度だけでは人の暮らしは支えられません。まごの手の助け合いは互いを理解し、顔が見え、笑顔で支え合う、そんな関わりを大切にする活動です。

利用会員の言葉:「まごの手のような活動は、他の地域になかなかありません。佐野市にまごの手の活動があって助かります。とても貴重で、なくては困ります」
 今まで出来ていたことが、ある日突然出来なくなり、孤独に暮らす高齢者。障がい者やその家族は不安を抱え、介護に疲れ果てています。そのようなことは地域の人に見えず、理解されません。迅速な支援、不安を軽減する支援、介護者・家族の支援の重要性を利用会員さんの言葉で感じます。
 まごの手のたすけあい活動は移送サービスと家事支援・身体介助です。
移送サービス:通院や買物、その他の外出支援
家事支援:掃除、食事作り、買物代行、窓拭き、ゴミだし、入院中の衣類洗濯、薬受取り代行、草取り等
身体介助:病院・買物の付添、障がい者・障がい児の通勤・下校介助、障がい者会(当事者)や家族会の行事手伝い、トイレ介助、高齢者・障がい者の見守り、オムツ介助、食事介助等
〈障がい者・障がい児の通勤・下校介助、父子家庭の夕食作りは任意団体時代から今も継続している支援です。〉
活動会員の言葉:「ありがとうと言われ、生きがいを感じます」「会社勤めでは感じなかった、お互いさまの気持ちが大切です」「人生の大先輩とのふれあいが、勉強になります」
 誰でも活動でき、活動の中心は、定年退職者・主婦です。移送サービスの運転者は認定運転者講習会を修了し、市に登録します。(車両登録は栃木運輸支局に届けます)出発前に車の点検と体調を確認し、落ち着いて運転できるよう声かけます。また、交通安全の勉強会、運転チェックなどを行ない、安心・安全を心がけています。
 家事支援・身体介助は家事の延長のようですが、介護の勉強・利用者の理解・活動の意見交換を行なっています。
 定例会では、活動の経緯や設立趣旨書・目的の確認、行事の打ち合わせを行ない、活動者同士のコミュニケーションを図っています。


コンサート

 年に1度のコンサートです。利用会員にアンケートを行ない、コンサート等外出の機会がないと結果が出ました。そこで、外出の提供・活動会員や地域の人とのふれあい、活動紹介のために、平成19年より開催しています。企画運営、来場者の移動の確保などまごの手で行ない、多くの人に呼びかけます。特に利用会員は身体が思うようにならず、引きこもりがちですが、「なじみの人が迎えに来てくれて、とても安心」「いろいろな人と和やかに会話ができ、元気が出る」と生きがいの場になっています。まごの手の大切な行事です。


居場所づくり(新しい活動)に向けて

 居場所 そこに行けば自分も何かできる役割がある、出来ないことは気兼ねなくお世話になる。そんなお互いさまの助け合い、地縁でない新しい絆(居場所の町内やお隣さん)のお付き合いが居場所にあります。今年度、まごの手利用会員から空き家を提供したいとの申し出を受け、誰もが立寄れる居場所づくりを進めます。人とのつながり・絆・生きがいを目的に、共感してくださる人を募り、出来ることから一歩一歩進めていきます。早速、居場所を通じ、新しい出会い・関わりが生まれています。


主な出来事の紹介

[平成13年9月] 住民参加型生活援助団体まごの手会発足
 助け合いの精神に基づき、細やかで迅速、そして柔軟な支援を行なう「まごの手会」が発足しました。
[平成17年4月24日]特定非営利活動法人まごの手 設立総会
 支援依頼や、利用会員も増えてきた頃、ボランティア移送を道路運送法の規制緩和により、NPO法人や社会福祉法人等の非営利法人のみに、福祉有償運送として許可をすると、国土交通省の通達を受け、透析による移送サービス利用のため、法人格取得に努力しました。
[平成17年8月31日]特定非営利活動法人まごの手 が認証され、法人設立
[平成18年5月25日]福祉有償運送許可
 道路運送法に基づく条件を全て満たすことができ、許可期限終了前に福祉有償運送(移送サービス)許可をいただき、安心して利用できるようになりました。
[平成19年2月4日] 講話「学びあおう介護保険」とオカリナ演奏のつどい
 初めてのまごの主催のコンサートです。
[平成19年5月21日]自家用有償旅客運送者登録
 道路運送法の一部改定に基づき、許可制から登録制に移行し登録しました。
[平成20年3月31日]自家用有償旅客運送者更新登録
 平成18年介護保険改定後、利用改定のため、多くの人がまごの手の助け合い活動を利用するようになりました。移送サービスの重要性が高まり、制度外サービスの継続性を改めて認識し、自家用有償旅客運送の更新登録をしました。
[平成20年10月19日]発足8周年・NPO法人3周年記念コンサート
[平成22年6月13日]第1回ふれあい居場所立ち上げ準備委員会
 ある市民活動に関心ある方が「残りの人生、人の役立ちたいと」外部者の準備委員に、その他3名、居場所の趣旨に賛同され、外郭者の準備委員になって頂きました。