「あしたのまち・くらしづくり2009」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

小さなおせっかいがここちよい上鳥羽のまちづくり
京都府京都市南区 あんしん・あんぜん上鳥羽推進委員会
上鳥羽学区の概要と取り組み

 上鳥羽学区は南区の鴨川と桂川に挟まれた南部に位置し、国道1号など南北東西の都市幹線道路が集中し、事業所や工場なども多く立地する面積の広い学区です。この上鳥羽学区で近年の子どもを取り巻く痛ましい事件の多発を受け、自治連合会を中心に、各種団体、小学校、PTA等が一体となり、子どもの防犯対策・安全教育を開始しました。
 平成16年6月に、児童全員に「防犯ブザー」と「防犯ステッカー」を配布しました。また、12月に自治連合会を中心に、PTAと各種団体が協力をして、「子どもの安心・安全を呼びかける」ビラの全戸配布、ポスターの作成、「上鳥羽あんしんあんぜん パトロール中」の啓発のぼり旗100本を、公園を中心に掲示する活動を行なっています。


京都市・大学との協働によるまちづくりのスタート

 平成17年の2~3月に京都市景観・まちづくりセンター主催で「地域まちづくりセミナー」を開催し、コーディネーターに立命館大学産業社会学部の石本講師を迎え、住民の関心の高い「地域における安心・安全」をテーマに、「まちへの思いを共有し、今後のまちづくり活動への展開の気運を盛り上げ、以後の活動に継続していくこと」を目的に、2回のワークショップを開催しました。
 このワークショップを通じて、「親どうしのつながりを深めること」「日常の声かけや挨拶を大切にすること」「地域みんなで子どもたちを見守ること」「企業も地域と一体になって安全なまちへの取り組みを展開すること」を確認しました。この取り組みの成果を踏まえ、以降、地元の自治連合会を中心に多くの団体等と、大学のゼミ、京都市と協働による「安心安全のまちづくり活動」がスタートしました。


「向こう三軒両々隣り―安心安全数珠つなぎマップ」の取り組み

 平成17年7月に地域まちづくりセミナーの成果の報告会で、「安心して暮らせる上鳥羽のまちづくり」に向けた取り組みが提案されました。また、石本ゼミの「向こう三軒両々隣り―安心安全の数珠つなぎマップ作成」事業が、平成17年度の「大学地域連携モデル創造支援事業」の選定を受けたこともあり、学区全体としてこのマップづくりの取り組みを開始しました。
 この取り組みは地域全体が子どもたちや高齢者を暖かく見守り、支えあう地域づくりを目指したものです。住民の方に「向こう三軒両々隣り―安心安全の数珠つなぎ宣言」をして頂き、宣言したお宅を基点に「向こう三軒両々隣りの10軒」を「1ユニット」として、このユニットを住宅地図にプロットしてつながり度を示す「向こう三軒両々隣り―安心安全数珠つなぎマップ」を作成するものです。お互いの目と声かけでつなぐ、「まちの安心・安全のつながり」の度合いをビジュアルに示すことで取り組み状況の確認ができます。
 また、学区内の企業のみなさんには、「安心安全の数珠つなぎ〝見守り〟宣言」を呼びかけています。
 平成20年3月末現在で宣言者数約400人、見守り宣言企業数は40社になっています。まだまだ学区全体から見ると、数珠つなぎにまでは至っていません。しかし、様々な機会を通じて宣言者を増やし、まちの北から南へ、東から西へ数珠つなぎの完成を目指して取り組んでいます。


あんしん・あんぜん上鳥羽推進委員会の設立

 平成17年度の子どもの安心安全に向けた様々な活動の取り組みを踏まえ、さらに組織的、計画的に取り組みを展開することを目的として、自治連合会と各種団体、PTA、小学校などが集まって、平成18年4月に「あんしん・あんぜん上鳥羽推進委員会」を設立しました。推進委員会では月1回の定例会を開催、各団体の取り組みの相互報告と確認、および新たな取り組みの企画とその行動提起を行なっています。

(取り組み)上鳥羽あんしん・あんぜんパレード
 子どもの安心安全を見守る取り組みを広げることを目的に、毎年4月に「あんしん・あんぜん推進パレード」を実施しています。委員会メンバーや子どもたちと、学区内の公園から小学校までパレードを行ない、沿道のみなさんに、「大人の温かい目によるこどもの見守り」をPRしています。

(取り組み)竹プランターづくり
 子どもの見守り活動として、「竹プランターづくり」に取り組んでいます。この取り組みは手作りの竹プランターを玄関先に飾り付け、朝夕の水やりの際に、子どもに声かけを行なう運動です。委員会メンバー総出で竹プランターを作成し、学区内の希望者に配布して声かけを実行しています。

(取り組み)「上鳥羽―小さなおせっかい宣言」
 委員会を中心とするこれまでの多様な取り組みの結果として、「小さなおせっかい」の声かけも学区住民に徐々に認知と理解を深めつつあることを踏まえ、平成21年2月21日に「上鳥羽―小さなおせっかい宣言」を行ないました。「小さなおせっかい」に包まれた、温かい、ここちよい上鳥羽のまちづくりを発信することを宣言しました。当日には、活動交流をしている東京の荒川区「あらかわの心」推進運動のみなさんが出席され、「あらかわの心」の寸劇を上演して頂きました。

(取り組み)七夕の夕べ
夏の夜の取り組みとして七夕の夕べを実施しています。小学生や保育園児、そして委員会メンバーが書いた短冊の七夕飾りを小学校の校門前に並べ、足下には竹プランターやペットボトル行灯を並べ、花火大会など、子どもと親が一緒に七夕の夕べを楽しんでいます。


(取り組み)「小さなおせっかい寸劇」の上演
 今年の七夕の夕べでは「あらわかの心」の寸劇をを上鳥羽風にアレンジして、おやじの会、PTAそして学生の共演による「小さなおせっかい寸劇」を上演しました。予想外の子どもたちの反応があり、今後も上演を続ける予定です。

(取り組み)七夕の夕べ「小さなおせっかい賞」の表彰
また、今年の七夕飾りでは小学生が、「小さなおせっかい」を題材に短冊を作りました。その短冊の作品を先生方に整理して頂き、委員会で子どもたちの思いが伝わる作品を「小さなおせっかい賞」として選定しました。そして七夕の夕べの際に各学年の優秀賞を発表し、表彰式を行いました。
上鳥羽I小さなおせっかい宣言

①笑顔であいさつしましょう
②思いやりの心を持ちましょう
③声かけをしましょう
④できることから始めましょう
⑤みんなで取り組みましょう

(取り組み)夏の納涼フェスティバル「夏の夜市」の開催
 夏休みの子どもたちの見守り活動と、夏の夜の子どもたちの新たな楽しみ、思い出づくりとして「夏の納涼フェスティバル『夏の夜市』」を実施しています。この夏祭りで子どもたちは夏の夜を楽しみ、大人はその風景を見て昔風の夜なべ談義を繰り広げています。
 今年の夏の夜市は学区内の公園で開催しましたが、学生を中心にペットボトル行灯を約七五○個作成して、「天の川イン西高瀬川」と題して、川の土手に並べました。行灯の絵は子どもたちや自治連役員の方の作品を貼り付けましたが、夕闇の中にほのかに光る行灯は、また一つ上鳥羽の新しい夏休みの思い出を追加することができました。

あんしん・あんぜん上鳥羽のまちづくりの取り組みの流れ

 平成16年度に地域・PTA・学校が一体となって、「子どもが安心して暮らせる上鳥羽地域」を目指して取り組みを開始、平成18年4月に「あんしん・あんぜん上鳥羽推進委員会」を設立以来、委員会では「小さなおせっかいがここちよいまちづくり」を基本目標に活動を継続しています。
 上鳥羽でのまちづくりの取り組みは手探りからのスタートで、住民の手作りの取り組みを基本に、その内容の充実と取り組み規模の拡大をこれまで図ってきました。
 「向こう三軒両々隣り―安心安全数珠つなぎマップ」、「上鳥羽あんしん・あんぜんパレード」、「竹プランターづくり」、「七夕の夕べ」、「夏の納涼フェスティバル『夜市』」、そして「小さなおせっかい宣言」と、上鳥羽から全国に発信するユニークな取り組みを実践しています。これからも「小さなおせっかいがここちよい上鳥羽のまち」を目指して、「小さなおせっかい」の声かけ運動を展開していきます。
 委員会ではこのように、今一度ご近所づきあいを見直し、おせっかいさを復活することで、「まちの安心安全の地域力の再生」を目指して取組んでいます。


あんしん・あんぜん上鳥羽のまちづくりの取り組みの成果

★上鳥羽では子どもの見守り活動から多くの人が交流するまちづくり活動に広がっています。これまで自治連合会や各種団体、小学校などの個々の活動は活発でしたが横の連携があまり円滑ではありませんでした。現在は多くの団体の協力が進み、まちが変わったと自覚できるほどです。
★「小さなおせっかい運動」の取り組みは、今一度ご近所づきあいを見直し、おせっかいさを復活することで、まちの安心安全の地域力の再生につながっています。