「あしたのまち・くらしづくり2009」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
放置~再生活用~ネットワークを紡ぐ健やかライフ |
滋賀県近江八幡市 八幡酒蔵工房 |
あしたのまち・くらしづくりをめざして!活動記録と現在までの成果 日本の重要文化的景観第1号選定の旧市街地、かつての銀座通り「てんびんロード店街」に崩壊寸前の旧千鳥食堂があり著しく景観を害していた。改装によるまち並みの美化を市民ボランティアで実現し、地域の文化や自然と地元産の素材を再生した伝統工芸や郷土食を堪能できる宿泊も可能なものづくり&エコ体験のできるシステムを、ネットワークを紡ぐことで実現した。 これらを市民・観光客・伝統工芸・アートの担い手・生産農家などの交流拠点として活用するため、表通りに面した築120年の昭和レトロな旧千鳥食堂を修復し、気軽に立ち寄れる何か懐かしい癒しい空間として「八幡酒蔵工房」を再オープンした。 2007年に放置酒蔵を「おやじ連」(定年退職男性の社会活動ネットワークの総称)ボランティアと改装した旧工房から蔵元都合により2008年に移転する。 地域の素材で調理した食堂部門、町の駅として特産物を扱うこだわり部門、心行くまで制作に没頭できる工房部門を併設し、昔のバス切符販売窓口や井戸が現存し、坪庭を眺めることが出来る八幡の普通の町屋を、かつての賑わいが戻るまちづくりの拠点として再興し八幡の顔を創造してゆく。 生活様式の変化に伴い生活用具としての需要がなくなった竹林は、放置竹林と化し生態系を乱している。「八幡山の景観を良くする会」の間伐作業による廃材(資源ごみ)のリサイクルに伝統工芸の技を導入し、間伐竹の一環リサイクル工程を構築。独自の3R(リフォーム、リユース、リサイクル)活動をさらに進め、地域の特産品として竹工芸のブランド化を図る。 一方、近江八幡は典型的な通過型観光地となっており、観光客の増加にも関わらず一極集中型で地域全体が活性化しない。そこで、エコな町屋宿泊・滞在型の伝統工芸体験(http://sakagura-kobo.com)とまち歩き・水郷観光・ゆりかご水田の田植と収穫(http://gonza.jp/)・里山ボランティア体験などを組み合わせたエコ体験事業を展開し、人々の交流拠点としての役割を担う。それは、地域全体が自信と希望を呼び戻す契機となっていくものと確信する。 地域のピンポイント情報発信&交流手段とし市民(第8回IT大学地域デザインコースに参加し卒業後も「IT8の会」を結成し活動)が手づくりの「OH!見はちまんSNS」(http://multimediacenter.jp/sns/)を卒業制作し普及活動中。 【工房活動の紹介取材】 クリックアルバム◆循環型まちづくりをめざす「八幡酒蔵工房」リニューアルオープン!(近江八幡市)詳しくは→http://www.gaido.jp あしたのまち・くらしづくりをめざして!地域の課題と解決への試み ・古い町屋が風化し、取り壊され、新建材住宅や駐車場へと姿を変えている。 ・観光客は増えているものの、旧市街の中には宿泊施設も集客拠点もなく、大半の通りは人通りもなくシャッター街化が進行。 ・通過型観光では、近江八幡の豊かな自然・文化・歴史といった観光資源が有効に機能しない。 ・放置町屋を再生して、景観保全活動で生じた竹間伐材の有効利用による竹工芸ブランド創生や竹工芸の竹編み・竹染め・竹紙のリサイクルを主体とした交流拠点づくりの気運が高まり、市民らの手で八幡酒蔵工房の再生活用によるまちづくり。 ・このまま伝統的建造物を放置すると町並みや景観は損なわれる。建物のみの保存には限界があり、生活文化の動態保全が必要である。これは法規制だけでは解決せず、八幡を愛してくれる「よそ者」の増加と定着(ファン化)を促し、その人たちとの交流促進によって地域全体の意識改革を進めていくことが必要。 ・人の流れがなくなった商店街は店じまいを余儀なくされ、住人のない町屋はうらぶれた印象が漂う。ダメージが大きくなる前に解決せねばならない。 ・地元産再生材を利用した竹工芸・竹紙漉き・葦紙漉き・陶芸・木工芸などをじっくりと楽しみ、作品と技を持ち帰ってもらう。指導には、伝統素材や技法を現代に適合させているプロ職人のほか、本工房でプロから技術を学んだ地元シニアのボランティアも参画し、滞在期間中に地元有志の案内や指導で、伝統的まち並見学・ヴォーリズ建築見学・外来魚駆除活動・西の湖水質保全活動・ヨシ刈り・八幡山景観保全活動・八幡堀清掃・姨綺耶山登山・沖島探検・農作業体験・茶摘み&和紅茶づくりなどの中から希望や季節によりコースを選択。「ホンモノの近江八幡」の醍醐味を存分に堪能してもらう。 ・ブログやSNSなどを利用して、帰った参加者とも継続的にコミュニケーションを重ね、工房のみならず地域全体の魅力向上を図り、地域の活性化をめざす。 あしたのまち・くらしづくりをめざして!活動成果 地域ブランド酒「権座」の誕生 水田魚道の三者協働設置(NPO法人旅するお魚サポーター/白王町集落営農組合/八幡酒蔵工房)による「ゆりかご水田」が発端となり、ゼロエミッションなお酒をつくるプロジェクトが立ち上がった。権座・水郷を守り育てる会が発足し「滋賀渡り船6号」というストリー性あふれる酒米を今も田舟で渡る田圃(権座)で育て、収穫醸造し、3月29日に純米吟醸酒「権座」のお披露目となった(詳しくはhttp://gonza.jp/)。地域ブランド酒誕生には、白王町集落営農組合・喜多酒造株式会社・NPO法人旅するおさかなサポーター・県の農産普及課・ボーイスカウト・八幡酒蔵工房と多くの団体や人々が関わった。 お披露目交流会には180人の人々が参加し、水郷と旨い酒&白王名物百人ちゃんこ・おいしい地元の素材を使ったお料理を楽しんだ。2日間で地元の酒店では売り切れが続出する本当に美味しいお酒の誕生となった。 副産物(55%精米の糠=米粉)もくまなく利用するプロジェクトも進展中。上白米ぬか100%シフォンケーキ・上白米ぬか100%クッキー・上白米ぬか50%の米粉ドーナツも商品化に成功し好評を博した。米粉石鹸・大樽粕漬け・米粉酒まんじゅうなど試作中。 地域のプラットホーム/再生町屋「八幡酒蔵工房」の誕生 賃貸契約に11か月、廃材撤去・解体・修復&改装と8か月かかった工房リノベーションもボランティアの皆さまのお陰でほぼ終わり、活動が再開にこぎ着けた。人の住めないといわれた放置町屋が、よもやのリニューアルオープンに驚きの声が上がる。 改装前のカビ臭い空間が、爽やかな風が抜ける心地よい空間へと様変わりした。 庭樹&杉苔・山土・バーク・粉砕御影石・化粧石をすべて含み材料費のみ工賃皆無の粋な庭も完成。みんなの力や思いがつくり上げた工房のひと息つける空間が出現。 唯一の値打ちものは、滋賀県守山市で採石されて、今は産出しなくなった幻の守山石(縦皺のある石)が3個残っている。地域の歴史を物語る貴重な庭石同様に価値のある癒しの空間が完成した。 前工房の講座をバージョンUPし、ここでしかできない講座やワークショップの開催、都市と農村をつなぐサテライトショップとして多彩な人々が行きかう地域の交流と拠点としての活動がはじまる。 2007年 ・崩壊寸前の酒蔵 第1期リノベーション ・八幡酒蔵工房開設 ・八幡山の間伐竹の一貫リサイクル完了 ・竹編み講師養成講座開設 ・竹紙漉きワークショップ・竹紙展開催 2008年 ・放置町屋 第2期リノベーション ・八幡酒蔵工房移転開設(宿泊・飲食可能な滞在型の工房開設) 2009年 ・水郷・権座を守り育てる会プロジェクト参画 ・地域ブランド純米吟醸酒「権座」誕生 ・放置茶畑・再生 ・自家茶畑で和紅茶づくり講座の開催(茶摘み→和紅茶づくり→試飲交流会) ・放置耕作地・畑Ⅰ再生・放置耕作地・畑Ⅱ再生開始 ・「ちくじんエコツアー」協働企画&受け入れ・学習交流会 ・こだわり滋賀ネットワーク主催・農と食のコーディネーター資格習得 ・竹工芸講座開催(八幡山の間伐竹利用) ・芸大生による「はじめの一歩」7月展開(工房ギャラリー) ・堀尾貞治「権座風景展」7月開催(工房ギャラリー) ・同時開催「四角連動」ぼんくら例会・現場芸術集団空気(産業遺産瓦常工場跡) ※堀尾貞治&現場芸術集団空気:「ベネチアビエンナーレ2009」展示・パフォーマンスの具体美術のグループ ・良い自転車によるレンタルサイクル事業参画 協働・関連団体の活動記録 ・福田知弘大阪大学大学院工学研究科准教授 ・環境・エネルギー工学専攻 環境設計情報学領域http://y-f-lab.jp/fukudablog/(近江八幡市まちづくり統括・工房顧問) ・水郷・権座を守り育てる会http://gonza.jp/(工房・商品開発部会&)イベント企画部会参加) ・近江八幡マルチメメディアセンターhttp://multimediacenter.jp/(SNS制作指導) ・八幡山の景観を良くする会(里山整備&放置竹林間伐活動・素材提供)http://www.city.omihachiman.shiga.jp/cmsfiles/contents/0000001/1963/soshiki.pdf ・八幡掘りを守る会 ・白王町営農組合(権座のある集落・ゆりかご水田酒米&滋賀渡り船6号生産農家) ・喜多酒造株式会社http://kirakucho.com/(権座醸造) ・NPO法人旅するお魚サポーターhttp://blogs.yahoo.co.jp/tabiuojapan(権座の魚道設置) ・ヴォーリズ展実行委員会http://voriesinomihachiman.shiga-saku.net/ ・東近江映像記録会http://movie.geocities.jp/eizoukirokukai/(権座DVD制作) ・ちくじん関西環境部会http://www.chikujin.com/(エコツアー来幡) ・akk Architects一級建築士事務所http://akkarchitects.com/(陶芸工房デザイン・Eiichi Matsuda) ・柴田いづみ滋賀県立大学環境科学学部教授 http://www.ses.usp.ac.jp/index.html(レンタルサイクル事業) 西川工務店・ナカムラ水道・中川左官 |