「あしたのまち・くらしづくり2009」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
スケッチで街の活性化 |
愛知県大府市 大府スケッチ研究会 |
わが郷土大府市は名古屋市の南隣にあり名古屋のベッドタウンとして発展してきた。昔は農業中心の街で歴史、文化、観光名所等は近隣の街にくらべてとぼしい。人口の半分以上は転入した住民といわれている。特に駅前商店街の衰退はひどい。街の元気、活気は商店街の活気に比例するといわれている。私たちのスケッチにより市民が地元を知り、商店街が昔のにぎやかさを取り戻してほしい。 まちづくり (1)スケッチの展示 市内をスケッチブックを片手に持ち、あらゆる建物、場所をスケッチした。観光名所、公共の建物、学校、病院、神社仏閣、商店等を1万枚描き続けた。その絵を市役所や銀行のロビー、公民館等で何回も展示した。新聞やテレビ等で報道され、多くの市民が見に来た。大府にこんなところがあるとか、こんなに多くのお寺や神社があるとか、お店がたくさんあるとか、皆、新しい発見をしてみえた。大府市には絵はがきがないから、この絵で作ってみたらとの声が多くあった。人気の多かった絵で「大府観光絵はがき」「大府神社仏閣物語」「学校めぐり」「お医者ガイド」等を作った。 (2)絵はがき 一番人気のあったのは「大府観光絵はがき」であった。アンケート等で人気のあった絵を12枚選び、1000部印刷した。大府市へ仕事にみえたり、視察にみえたり、外国からの留学生、また外国に住んでいる子どもたちがいる親・・・に特に喜ばれた。年賀状や暑中見舞いに利用されている人も多い。市の職員等が県外出張の時に資料として、みやげとして持参して大変喜ばれている。 (3)名物菓子の包装紙 市内の有名菓子店の高級モナカ「大府物語」にわれわれの描いたスケッチが使われている。大府の有名な観光地、お祭が四つ印刷されている。モナカなのでかなり長く保存できるので県外や外国にも多く郵送されている。モナカを食べながら大府市を思い出している。新聞やテレビで報道されたので、大府市の名物となっている。 (4)年賀状 地方限定版として年賀状に採用されたことがある。私たちの絵が印刷された時は飛び上がるほどうれしかった。しかし、年賀状なので売る時期が限られているため、売りさばくのに大変苦労した。残部は自分たちで年賀状として使用した。次の機会を待っている。 (5)本の発行 スケッチで大府案内の小冊子を作った。スケッチに簡単な文と地図をつけた。「大府めぐり」「お寺めぐり」「神社めぐり」「商店案内」等を印刷した。どの本も大府市観光おみやげ推奨品として選定された。市外の人ばかりでなく市内の人もその本を持って市内観光ウォーキングを楽しんでいる。お寺や神社には木々が多いので緑めぐりとして市民に親しまれている。 (6)童話の発行 大府市の特産品には、なし、ぶどう、やまいも、野菜、焼酎等がある。「大府かっぱものがたり」の中に子どもに人気のあるかっぱを登場させて童話を作った。 1 かっぱはやまいもが好き 2 なしとぶどうで病気がなおる 3 かっぱは野菜が好き 4 いも焼酎つくり 5 ひょうたんつくり 6 かっぱのいたずら 7 かっぱ天国 8 かっぱ用水 9 遠野旅行 10 長浜旅行 保育園、幼稚園、児童センター、図書館等へ10冊寄付して子どもたちに読んでもらっている。読みながら、大府の特産品を知り食べてもらう。かなり効果があるらしい。 (7)紙芝居 作成した本から紙芝居を作って保育園、幼稚園、児童センターで実演した。想像以上に子どもたちは真剣に絵を見て物語の語りに耳を傾けていた。アドリブを入れたり、冗談を言って楽しく演技している。あちこちの園から実演の依頼が多い。 (8)商店案内 商工会議所や商店街が売り出しのイベントを毎年実施している。それを側面から商店や製品のスケッチを描いて応援している。その店のスケッチを市役所や銀行、公民館等で展示会を開くと市内にこんな店があったのかとかこんなに多くの店があったのかという声が多い。新聞やテレビの報道もPRになる。 (9)大府案内 市内の会社、工場、学校、お医者、神社仏閣等の小冊子や紙芝居も作り、市民に配布して好評を得ている。 (10)ウォーキングコース 観光地、神社仏閣、学校、商店等を大府の地図に記入して、市内全域のウォーキングコースを作成して市民に配布している。観光と商店売り上げを目的にしている。 (11)大府博士検定 今流行のご当地検定である。紙芝居を見せて興味をいだかせる。検定の勉強帳を作り、できるだけイラストを多く入れた。毎回100人くらいが受験し大府の勉強をしている。 ひとづくり(似顔絵で) (1)似顔絵の展示 商工会議所主催の大売り出しのイベントが毎年行なわれている。毎年70くらいの商店が参加している。1枚のパンフレットに70商店の店や商店主の写真等が印刷されている。小さい写真なので、私たちが描いた店のスケッチと商店主の似顔絵を一緒に載せた小冊子を作り、市民に配布した。似顔絵を載せたのは初めてだったので大きな反響があった。スケッチの展示会のように似顔絵だけの展示会を開いた。大反響であった。「私は誰でしょう」のクイズで盛り上げた。「似ている、似ている」「親父さんに似ている」……店のスケッチより似顔絵のほうが宣伝効果があることがわかった。 (2)商店主の似顔絵 商店のスケッチより商店主の似顔絵のほうが人気がある。店主だけでなく店員や家族全員の似顔絵が店頭に貼ってある店もある。それを見てお客さんとの会話がはずみ、売り上げを伸ばしている。胸と背中に自分の似顔絵を印刷したTシャツを着て、自分の似顔絵名刺を渡せば効果は一段と増す。 (3)幼稚園児の似顔絵 数年前から市内の幼稚園児の卒園記念に似顔絵を全員にプレゼントしている。去年は500人の園児に一人一人手渡した。園児のうれしそうな顔が忘れられない。 (4)市の幹部の似顔絵 市長、市会議長、議長、商工会議所会頭等の似顔絵を描いて本人にプレゼントしたり機会あるごとに展示している。近隣の市長も会ったり写真等を参考にして描いてプレゼントしている。友好都市の遠野市や長浜市の市長や幹部も描いている。東北の遠野市は市長室の正面に飾ってある。似顔絵が両市の友好の輪を結んでいると聞くとうれしい。 (5)お寺の住職の似顔絵 毎年5月3日から3日間「花まつり巡礼」がもう20年続いている。お寺や住職の絵もイベントを盛り上げている。似顔絵Tシャツを着ている住職さんもいる。 (6)まつりの幹部の似顔絵 市全体で春、夏、秋にまつりをやって盛り上げている。自治会、区長、コミュニティの会長や幹部の似顔絵を描き、あちこちで展示して盛り上げている。 (7)金婚式、老人会の似顔絵 金婚式を迎える夫婦や老人会の人の似顔絵を描いてプレゼントしている。最近は夫婦一緒に1枚に描いてほしいとの希望がある。葬式場の入口に飾ってあった例もある。 (8)大すもうの似顔絵 毎年名古屋場所に時「片男波部屋」が大府市内に宿を設ける。市民は朝5時頃から猛練習を見ている。親方を始め全員で20名くらいの似顔絵を描いて部屋の中や土俵のそばに貼ってある。力士の名前を覚えるのに役立っている。 (9)恩師の似顔絵 クラス会に80歳以上の恩師が出席される。その時恩師の似顔絵を描き額に入れてプレゼントすると非常に喜ばれる。出席者にも描いてプレゼントしたらそれ以来出席者が増えている。 (10)希望者の似顔絵 最近では一般市民から依頼が来る。喜ばれる姿がうれしいので希望者には誰でも描いてプレゼントしている。自宅のスケッチも希望者には描いてプレゼントしている。皆、家宝にするといって応接間に飾っている。 スケッチの効果 スケッチの展示会の報道が新聞やテレビに出ると街全体のPRになる。近隣の市町の人も大府市は活気があるとか明るい街だと言われるようになった。各商店の店頭に手書きの店のスケッチや商店主の似顔絵を貼ってある。お寺にも住職の似顔絵が貼ってある。訪れる人は今まで以上に親しみで会話ができたり、お参りしてみえる。似顔絵名刺を作って売り上げや新しいお客を増やしている。また、似顔絵Tシャツでお客様とより一層の親しみと店長との会話を弾ませている。これからもわれわれは協力して大府市のためにスケッチや似顔絵を描いて郷土の活性化に努力を続けたい。 |