「あしたのまち・くらしづくり2009」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

仲間づくり、生きがいづくり、地域おこし
新潟県長岡市 小国山野草会
はじめに~地域の概況と会のなりたち

 長岡市は、新潟県のほぼ中央に位置し、小国地域は市内の南部で市街地から車で約40分の農山村です。過疎や高齢化が進み、今小国地域の人口は約6400人です。周囲は山々に囲まれ、真ん中を信濃川の支流、渋海川が流れて水田を潤し、美味しい米を育ててくれます。全国でも有数の豪雪地帯で冬には2メートル以上の積雪となるなど厳しい自然環境の中、都会から訳あって故郷小国にUターンした私は、山里に豊富にある山野草に心を奪われました。ずっと地元に住んでいる人たちは、雪割草やカタクリ、ニリンソウ、などは暮らしの中に溶け込んでいて、あるのが当たり前、足元に花が咲いていても関心が薄かったのです。山野草の美しさや価値を、私はまわりの人たちに話し、山野草を育てて「まちおこし」に役立てようと、平成13年8月に女性14人、男性11人で「小国山野草会」を発足しました。会には山野草を育てること以外に、小国和紙に繊細な絵を描く人、アケビや藤つるの細工、竹工芸、わら細工、木の実のリースなどの名人もいます。会は「仲間づくり、生きがいづくり、地域おこし」を合言葉に活動を始めました。


小国の良さに気づき、自分の活動にも自信が出てきた仲間たち

 会員たちは自分の畑や山に眼を向けるようになり、山野草を採取して、展示会の日に合わせて花を咲かせています。雪割草をタネから育てている人は世界にひとつしかない、自分だけの花も育てています。老眼鏡をかけて栽培法の本を読むようになり、山野草の専門家に来てもらい実際に指導を受け、勉強し、工夫し、実践するようになりました。そして山野草を育てることが、会員それぞれの自己実現につながってきました。


地元での活動からスタート

 雪が消える4月には毎年、小国森林公園で「雪割草と春の山野草展」を開いています。約1200人を超える地域の人たちや、市外からも山野草の愛好家が来てくださり、会員との交流など楽しいひと時をすごしてもらいます。小国の雪割草は、豪雪に耐えて春が来るのを待ちかねて咲くためか、白、ピンク、赤、紫など言葉では表現できない多彩な花の色と、形もいろいろで見る人を引き付けています。販売も人気があり、会員も年々多くの雪割草を育てて、展示や販売ができるようになりました。
 雪割草以外にも、小国地域に自生するニリンソウやイカリソウ、カタクリなどを寄せ植えにしたり、深山に咲く風情を表現した鉢植えなどを展示しています。
 山野草以外に会員のつる細工や、和紙に描いた絵、竹細工、わら細工、自然の素材を使ったリースなども飾り、小国の匠の技を紹介しています。
 会員以外にも地元森林組合の山野草、古民家のミニチュア、ガラス工芸、地元小中学生の絵や折り紙アートなど、私たちの活動を評価してくれる、多くの人たちからの出品があり会の活動が地域で評価されてきました。
 また来場者には、会員手作りの「小国のごっつお」をふるまっています。ゼンマイの煮物、ワラビの酢の物、フキのトウの味噌和え、手作りコンニャク、ヤーコンの黄金漬けなど地域に伝わる料理をずらりと並べ、伝統料理の美味しさを若い人たちや地域外の人たちにPRしています。
 また毎年5月には、地元郵便局で初夏を楽しむ「ミニ山野草展」を開き、郵便局を訪れる人たちにも小国の山里の雰囲気を楽しんでいただいています。


地域外への活動の広がり

 小国地域から、市中心部への情報発信として平成17年11月に、長岡市大手通の市民センターで「小国まるごと発信」を開きました。地域外では初めての山野草展で、地元の小学生が「小国和紙」の工房で体験学習して作った「行灯」も一緒に飾り、7日間で約1万人の人たちから見て頂きました。
 これがきっかけとなり、長岡市の市民活動の拠点である市民センターから私たちの会に依頼があり、5月から11月まで毎月1回開かれる大手通歩行者天国「市民活動まつり」にも参加するようになりました。ここでは山野草の鉢植えの他に、会員たちが作っているダイコン、ハクサイなどの小国の野菜も販売してこれが大変好評でした。ここで会員たちは自分が作った野菜が売れるということを初めて経験し、次への活動につながりました。
 また会員の冬期間の活動として折り紙を考え、私が長岡市在住の南雲タカさんから教えていただいたことを工夫し、応用して、会員に伝道講習をしました。色紙に花や動物の折り紙をはりつけ、余白に俳句や短歌、詩などを書き添えます。この作品は私が「折り紙アート」と名づけました。
 平成20年と21年の2月に新潟市の新潟県庁18階展望回廊に、会員の折り紙アートを2週間展示し、とても大きな反響がありました。長岡市のケーブルテレビがこれを取材して、その後何回も放映されて、地域外の人たちにも会の活動が紹介されたことは、広く会の活動.が認められてきたと感じて、会員たちの大きな励みと自信につながりました。
 今年は4月下旬から10日間、新潟市の県立植物園で初めて山野草と工芸品の展示、リース作りの体験教室や山菜・野菜の販売を行ない、狭いスペースと暖房している屋内での山野草の飾り方をいろいろ勉強しました。


中越地震の被災地への支援

 平成16年10月の中越地震では小国地域も大きな被害を受けました。会員も住宅や車庫が壊れるなど被害がありました。しかし会員たちは地域外からのボランティアの団体と一緒に、特に被害の大きかった集落の仮設住宅でピアノコンサート、お菓子作り、大正琴の演奏などを開き、会の活動を地域の人たちに広めることができました。
 平成18年の長岡市制100周年記念行事のひとつの「1万本のチューリップ花絵」ではこの仮設住宅の広場を「笑顔いっぱいの男の子たち」の絵を花で飾り、復興への支援をしました。


都市と農山村を結ぶ「魔女の直送便」

 小国町が長岡市を中心とする九つの市町村と広域合併しで4年目です。合併した旧市町村がお互いに交流しあう諸事業が展開されているなか、昨年5月に「魔女の直送便」という組織を作りました。
 「魔女」としたのは、仲間たちは手に鎌や鍬を持てば野菜を作り、スコップを持てば山野草の花を咲かせ、包丁を持てば美味しい料理ができる、はさみを持てば折り紙アートができるという具合になんでもその手から生み出すから、これぞ魔女と思って名づけました。会員は13人で、小国山野草の会の会員のほか地域の女性も一緒に活動しています。集落内の遊休農地4アールを活用し、カボチャ、サトイモ、サツマイモなどを共同作業で栽培しています。これまで交流してきた多くの仲間たちに「山の幸を定期便として届けるのが楽しみ」と新たな活動に胸を膨らませています。これを契機として豊富にある小国の地域資源を発掘し、地域間交流を進めて自分たちの住む地域の良さを、他地域にアピールしていきたいと考えています。


終わりに

 会の活動が小国地域内からさらに新潟県内、県外にも認められてきました。東京在住のいとこデュオ「ひなた」のコンサートを畑で開き中学生や地元の人が50人参加してくれました。地元の小学校の図工クラブに依頼され会員3人で「アジサイ」をテーマにした巨大アート製作のお手伝いをしてきました。その活動は長岡のケーブルテレビの取材を受け先日放映されました。6月には千葉県松戸市の聖徳大学の楽しく交流する「楽習フェスタ」にも招かれ、分科会で自分たちの活動を紹介しました。また、今年好評だった山野草展を来年も4月27日から10日間、新潟県立植物園で開くことも決定しています。
 山野草を育て、大勢の人たちから見ていただくことから始まった私たちの地道な活動ですが、粘り強く続けてきたことが今ひとつずつ、花開いてきた思いでいっぱいです。これからも会の活動を地域に広め、地域の人たちと一緒に「元気な地域づくり」という夢の実現に向けて、さらに努力していきます。そして地域の人たちが一人でも多く「小国に住んで良かった」と自信を持って外に言えるよう、会員みんなでがんばります。