「あしたのまち・くらしづくり2008」掲載
<企業の地域社会貢献活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

「さくら」を活かしたまちづくり及び子どもたちへの環境教育活動支援
茨城県日立市 日鉱金属株式会社
歴史的背景

 日立市は、明治以来国内有数の銅鉱山から鉱工業都市として発展してきましたが、産業の発展とともに工業化、都市化の進展に伴い、大気汚染や水質汚濁などの公害問題も発生してきました。特に日立鉱山の銅の生産の飛躍的増産に伴い、銅鉱石に含まれる硫黄分による亜硫酸ガスの煙害が、周辺の農作物や山々の木々を枯らす深刻な公害問題に発展し、事業存続をも問われるまでに至った時期がありました。
 日立鉱山は、排煙対策としての当時の常識(単にガスの希釈)により、百足煙突や達磨煙突などの試行錯誤を重ねたが効果は上がらず苦悩をした末、大正3年に常識を覆す高層気流への亜硫酸ガスを放出し拡散する方式(火山の煙の自然の姿をヒント)を採用し、155.7メートルという当時世界一の大煙突を、社運をかけて建設した結果、煙害は驚くほど激減しました。
 その後、荒廃した山々に緑を回復させるため、煙害に強い樹木1000万本(うち、オオシマザクラは320万本)の植林を大正から昭和にかけて行ない、この努力が実って日立周辺の山々は見事に緑が回復したことが現在の日立市の「さくらのまち」の原点となりました。その結果、他の鉱山に見られるような荒廃した山々は見られず、今では緑豊かな、特に、春には桜が咲き誇る郷土の山々が広がっております。
 このように、日立市では企業の社会的責任の理念のもと、地域住民との共存共栄をモットーに、企業と住民、行政が一体となって環境問題を克服してきた歴史があります。
 環境の歴史的シンボルである大煙突やさくらを通し、その精神は今もなお市民の心に深く刻まれており、環境に対する市民意識も高く、自然を大切にしたうるおいのある都市環境づくりを進めております。
 日鉱金属株式会社グループは、創業当初から日立鉱山における大煙突の建設やオオシマザクラの植林に象徴されるように、環境問題等を通じ地域社会との共生、市民とともに歩むまちづくりを念頭に事業活動を行なってきています。


さくらのまちづくり支援事業

 日立市のシンボルでもあるオオシマザクラは、日立鉱山の煙害対策として、企業・行政・市民が共に協力し合い、長い年月をかけて植栽されてきた歴史があり、環境対策の象徴となっています。市の花でもあり、かつての煙害対策として植栽した「さくら」を守り、育てる実践活動を紹介します。

(1)鞍掛山のさくらの山づくり事業へのボランティア参加
 日本のさくら名所百選に選ばれている「かみね公園」の北側に位置し、市街地からも見通しが効く鞍掛山は、かつての煙害対策で緑化回復のためオオシマザクラが植樹されたところである。現在は手入れが行き届かず荒廃している山を、市民が憩える桜の山として、また、子どもたちが自然観察や森林体験を行なうことのできる場として、「市民参加の世代を超えた22世紀のさくらの山づくり」をコンセプトに市民、企業を巻き込んで「鞍掛山さくら100年委員会」を平成19年度に組織し、整備・利活用を図っていく活動をスタートしました。
 今年4月の第1回の整備活動には140名の市民や企業のボランティアが参加し、下草刈や枝払いなど日鉱金属社員もボランティアとして大勢参加されました。今後100年をかけてさくらの山をめざし、毎年、整備活動を実施していきます。
 また、新たに日立市議会議員全員による支援組織「さくらを守り育てる日立市議会議員の会」が結成され、まさに、市を挙げて100年後のさくらのまちづくりに向けた取り組みを進めています。

(2)さくらパートナー事業
 日本のさくら名所百選のひとつである日立平和通りには、120本近いソメイヨシノが街路樹として植樹されているが、50年以上が経ち老齢による立ち枯れが目立ち始めており、後世に残していくため、世代交代として市民や企業の寄附による若木の更新を行なっています。日鉱金属も「桜と日立市の永遠の繁栄を祈念いたします」とのメッセージを添えて、積極的な植栽に参加しています。

(3)さくら等の環境整備事業への寄附行為
 市への寄附金は、日鉱金属株式会社における地域貢献の一環として、企業と地域のまちづくりの象徴的存在であり、地域資源でもある「さくら」を、将来に向けて守り育てる環境整備事業への有効活用という趣旨で寄附されたものである。平成20年度から毎年寄附を予定されています。
 日立市におけるさくらのまちづくり事業は、鞍掛山のさくらの山づくり、平和通りのさくらの更新、テングス病対策、日立の固有種として品種登録されている「日立紅寒桜」の育成、さくらを守り育てる人材育成など、さくらに関する各種事業の推進、拡充を図る事業であり、今後新たな事業の検討を加え、寄附金を有効に活用していくこととしています。


次代を担う子どもたちへの環境教育活動支援への寄附行為

 平成17年、創業100周年を迎えた新日鉱ホールディングス株式会社(日鉱金属株式会社の親会社で旧日立鉱山)から、会社発祥の地である日立市に対し、「次の時代を担う子どもたちが環境や自然を学び研究するために役立てていただきたい」として、多額の寄附がありました。
 日立市では、寄附の趣旨を受け、子どもたちの環境教育活動を支援するため、環境教育基金を創設し、その活動を行なう団体に平成18年度から補助することとしました。この事業は、毎年度、学校や子ども関係団体等の活動を対象に一定額の補助を行ない、長期的視点で日立市における環境教育の推進を図るものであります。

(1)補助対象となる活動
 子どもたちが中心となって行なう環境に関する実践活動、調査研究活動及び普及啓発活動。
・実践活動…例えば、ビオトープづくりを通しての動植物の観察を行なう。省資源、省エネルギー、リサイクル、緑化、ビオトープ、環境復元、環境美化、動植物の保護など。
・調査研究活動…例えば、河川や海辺の動植物を調べる。動植物の調査、水・大気などの調査、地域環境調査など。
・普及啓発活動…観察会、講座・教室、壁新聞・広報誌の作成など。

(2)学校等の取り組み活動
・児童自ら学校ビオトープづくりに参加し、ホタル飼育を通して環境への関心を高め、こころ豊かな児童を育てる。
・身近な地域の自然(河川調査、稲作体験など)を体験し、地域の人々との交流を通して、自ら考え、まとめ、伝える力を育む環境教育を行なう。

(3)補助対象校及び団体
・初年度である平成18年度は、小学校6校、平成19年度は21団体、平成20年度は19団体に補助している。
・補助を受けた団体の活動については、毎年、ひたち環境都市フェスタ環境教育活動発表会において報告、紹介を行なっている。
・各団体とも、1年間、環境教育に熱心に取り組み、成果を挙げている。


地域への環境保全のCSR活動

 河川の水質浄化や大気汚染防止などコンプライアンスに積極的に取り組み、環境保全に貢献しています。また、河川をきれいにする運動など地域コミュニティ運動に積極的に参加し、地域との交流により共存共栄を図っています。さらには、行政への積極的協力として、環境審議会や環境を創る日立市民会議、鞍掛山さくら100年委員会など各種審議会、委員会に積極的に参画して、市民・企業一体となったまちづくりに貢献しています。


資源循環型社会の形成への貢献

 日鉱金属株式会社及び関連会社は、環境リサイクル事業の強化等を目的とする「日立メタル・リサイクリング・コンプレックス計画」(HMC計画)の推進を図っています。
 各種IT機器や自動車、家電品等にはレアメタルや貴金属を多く含む多種の有価金属が使用され、これらの廃棄物が大量に発生する首都圏は大型の都市鉱山ともいわれ、これらからレアメタル等を回収し、原材料の安定確保を図ることを通じ、環境負荷の低減と循環型社会の形成をより積極的に推進し、持続可能な社会の実現に貢献しています。