「あしたのまち・くらしづくり2008」掲載
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

地域に密着した共同出資の店「なんでもや」
宮城県丸森町 大張物産センター なんでもや
・共同出資による自分たちの店「なんでもや」を設立
 地域住民から出資金により自分たちのお店を自分たちで設立。開店に当たり内装工事等は地元の大工さんや電気工事店などの協力で修理。
 日用雑貨品、食料品のほか、冷蔵庫などの電気製品、草刈機から車までできるものはなんでも取り揃えていることを基本理念としている。
・高齢者世帯の味方の「なんでもや」
 過疎地域である本地区の、特に車を持たない高齢者が日用雑貨品などを購入できるようになった。
 1人暮らし、車を持たない世帯には、電話1本でなんでも配達。
・産直部会の開設
 お年寄りが今まで自家用のみとして栽培していた新鮮野菜を産直で販売できるようになった。
・共同店同士との交流
 共同店として100年の歴史のある沖縄県国頭村奥地区などとの人的・物産交流が始まった。「なんでもや」からは新米を送り、沖縄からはパイナップル、塩、新茶が送られてくるなど、それぞれの特産品による交流が始まった。
・創業祭の実施
 人口1000人の集落に、2000人の来場者で賑わった。


成果

 地域のお年寄りや子どもたちが日用雑貨品、生活必需品の購入する場所ができた。
 近隣市町村で買い物をするしかなかった大張地区住民であったが、地域から出資をしていただいたことで、自分たちのお店という意識が芽生え、他地区へ流出していた経済が、「なんでもや」を中心にまわる循環社会の仕組みができた。
 調理場の設置は、仕出し部門による収入増や産直野菜の有効活用、そして1人暮らし世帯には材料を調理する手間が省かれ、大変喜ばれている。
 移動販売車の購入は、お年寄り世帯などへの配達のほか、定期的に巡回することで、お年寄りの話を聞いたり、健康状態について気を配るなどの地域に密着した店として地域の安心安全に役立っている。
 新鮮野菜の産直は、規格品外の販売のメリットや少額であるが収入につながり、以前に増して元気に働くお年寄りが増えた。生産意欲の高揚は遊休畑の再利用にも貢献している。
 「なんでもや」や「沢尻棚田」のマスコミによる報道もあって、県内外からの来遊者の増加し、観光施設と「なんでもや」の相乗効果によって地域の活性化に貢献している。
 丸森町大張地区は、町の中心部より10キロほど西方に位置し、戸数約300戸、人口1000人余りの中山間地である。近年は少子高齢化や、市街地への移転など世帯数も減少傾向が続いている。
 平成13年頃から地区内の小売店が廃業し、農協の購買部も広域合併の影響で撤退するなど、近くに日用品を買うお店がなくなってしまった。そのため、高齢者世帯の生活に支障が出てくるのはもちろんのこと、地域の住民も生活物資の購入さえできない不便さに困惑する事態が続いた。
 そこで、丸森町商工会大張支部の有志は、お店を始めようかと検討をし始めたころ、アドバイザーだった郷土研究家の結城登美雄氏から、共同出資で経営され、収益を地元に還元している沖縄県国頭村奥地区の「奥共同店」の仕組みが紹介され、大きなヒントとなった。
 早速、設立準備委員会が設けられ、地域の活性化と高齢者や地域の皆さんの生活が便利になるように何でも揃うお店にしたい。お店に来て、みんなでお茶を飲みながら話ができるような場所にしたいという想いがまとめられた。
 場所は、地区の中心部、旧JA購買部の空き店舗を借りることとし、出資金は、1世帯2000円と決めた。役員は8行政区で説明会を開き、区長は各世帯を回り、出資に協力を求めた。その結果、200世帯から40万円。商工会員は10万円ずつ。合わせて200万円の出資金が集まった。
 改装工事は、地元の工務店などが協力し、平成15年12月6日に開店となった。暮らしに必要なものはなんでも取り扱おうという趣旨から、名前は「大張物産センター なんでもや」に決まった。店では、日用雑貨、食料品、地元の農家が生産する新鮮野菜のほかに草刈機械や軽自動車までお客さんの要望になんでも応えてしまう。140人を超えるテナントがこれを支えている。
 なんでもやのお陰で、店内には地元の新鮮野菜や日用品雑貨が並びとても便利になったのと同時に、地域のお年寄りなどが自分の畑で作った野菜が売れるため、お年寄りが以前にも増して元気に働いている。地域経済に循環ができた。
 初年度の売り上げは3100万円。2年目は3600万円。3年目は4000万円と順調に伸びてきた。お年寄り世帯が多く材料を調理するのが大変であるという要望には、プレハブの調理場を作り惣菜を提供すようにした。2年目は軽自動車の保冷車を購入し、車で来られないお客さんに対し牛乳1本から宅配するなど少しずつ地域住民の要望に応えてきた。
 昨年の11月に行なわれた創業4周年には、天候も悪い中それでも1000人の地区に1200人の来場者があり、大張地区を上げてのイベントとして定着している。マスコミが取り上げてくれた効果もあり、地域の共同出資でできた「なんでもや」や「沢尻棚田」を目指してやってくる来遊者も確実に伸びてきています。さらに地域づくり総務大臣表彰など、様々な表彰を受賞することができた。「なんでもや」も地域のために頑張ってきたが、地域の方々が自分たちの店として支えてくれたからこそ、ここまでこれた。これからも地域の要望に応えられるような「なんでもや」にしていかなくてはならないと、役員一同知恵をしぼって邁進する所存である。
 産直部会も、季節や生産者の都合により偏りがちな野菜類の生産を、消費者の要望に見合った生産ができるような体制にすることが必要となってくる。
 高齢化が36%に達している大張地区では、生鮮食料品や惣菜をなんでもやの移動販売に頼る世帯も増えてきていることから、調理部門の拡充なども検討課題である。高齢者世帯への物資販売の際、お年寄りの話を聞いたり、健康状態に気を配るなど地域に密着した店ならではの役割も必要となってくる。さらには、大張地区の伝統料理などや風習などを伝承するために「おらいの料理まつり」を「なんでもや」も協賛し開催している。それらのメニューの中から地産地消と調理部門を融合させた、高齢者向け宅配サービスなどにも視野に入れている。
 また、対外的には今後沖縄県奥地区など共同店との物産交流を一層進めるとともに、近隣都市圏へ大張地区の魅力を積極的に発信し、さらなる人的及び物産交流を進めていき、「なんでもや」はもちろん大張地区の活性化のために頑張っていきたい。
 地域の切実な要望を背に受けて、店長や看板娘たちは今日も元気だ。