「あしたのまち・くらしづくり2008」掲載
<子育て支援活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 内閣官房長官賞

小さな気づきが大きな活動に!―いきいきとした子どもたちの世界を守るために―
長野県長野市 NPO法人ながのこどもの城いきいきプロジェクト
活動記録

1 活動経過
 平成9年に小児科医の「診察室に来る子どもたちや保護者の様子がおかしい」という問題提起から長野市小児科医会を中心にした任意団体を発足した。平成14年10月にNPO法人格を取得し現在に至っている。その経過は次の通りである。
・平成9年9月25日 「ながのこどもの城づくりを進める会」として発足。
 活動内容 乳幼児を持つ親と子・小学生以上の親のための子育てサロン、こどもの心とからだの相談室
・平成10〜12年
 こどもフェスティバルの開催、アンケート調査の実施
・平成11年〜現在
 日赤遊び広場、グリーンファームの会の開催
・平成12年
 子育て情報誌「ぷれいmate」の発行、カウンセリング学習会、子育て講座を開催、こどもの文化活動に関する講座の開催
・平成13年〜
 冬の遊びの広場の開催
・平成14年10月
 NPO法人格取得
・平成15年4月
 長野市よりこども広場「じゃん・けん・ぽん」の運営を委託される
・平成18年4月
 「じゃん・けん・ぽん」長野市指定管理者となり現在に至る
・平成19年9月
 設立10周年記念、休日マタニティセミナー(長野市保健所協働事業)

2 子育てサロン、相談室の開催
 平成9年、会発足と同時に、長野市ふれあい福祉センターにおいて、月1回「乳幼児を持つ親と子の子育てサロン」「小学生以上の親のための子育てサロン」を子育て中の若い母親を中心に平成15年3月まで続けた。毎回盛況であった。
 小児科医による「こどもの心と体の相談室」も月1回行なわれ、診察室とは異なりゆっくり相談ができると予約でいっぱいであった。また、子どもの遊びを通して日常の様子が見られ、診察の参考になるなど小児科医自身にも好評であった。これは現在も継続されている。

3 子ども・母親へのアンケート調査の実施
 長野市内小・中学生を対象にしたもの及び児童・乳幼児を持つ母親へ現在抱えている悩みや利用している相談先等についての調査を実施した。

4 こどもフェスティバルの開催
 平成10、11、12年の3回長野市ビックハットにて子育て関連団体、機関と実行委員会を組織し、体験ゾーン、情報空間ゾーンなど八つのセクションで開催した。
 平成13年からは、身近な場所で通常的に子どもも大人も集える場所づくり、また長野の長い冬の遊び場不足の解消の場、体験、地域の文化の継承の場として11月から3月まで月1回ふれあい福祉センターで開催した。現在はもんぷらホールで規模を縮小し継続している。

5 あそび・体験に関する事業
 長野赤十字病院小児科と連携し、小児科病棟プレイルームにおいて院内遊びの広場を月1回開催し、長期入院している子どもたちを中心に人気が高かった。平成19年度まで続けた。(100回開催)
 犀川河川敷の畑を借りて、野菜の栽培、収穫体験や戸外での遊びの活動を月1回開催し子どもたちに好評である。現在の食育活動の先駆的役割を果たしている。

6 親子のふれあいの場づくりと子育てに悩む親の支援に関する事業
(1)こども広場「じゃん・けん・ぽん」の運営
 平成15年6月1日に大型商業施設の跡地利用施設「もんぜんぷら座」にオープンした長野市の中心市街地活性化事業こども広場「じゃん・けん・ぽん」を運営している。18年度からは、指定管理者として運営している。
 ア じゃん・けん・ぽん運営の基本方針
 (ア)中心市街地の活性化をはかりながら、乳児及び幼児とその保護者が天候に影響されずのびのびと遊べる環境を提供する。
 (イ)子育て中の悩みや不安の解消、楽しく明るい家庭づくりのための支援を専門家、こども広場スタッフ、子育て支援ボランティアなどとの連携で行なう。
 (ウ)利用者ニーズや社会背景としての子育てニーズに応えるだけでなく、自ら考え主体的子育てをしていく親を育てる。
 のもとに日々活動をし、毎日200人前後の親子連れで賑わっている。平成20年3月6日には、開設以来5年で入場者数30万人を超えることができた。
 イ じゃん・けん・ぽんの取り組み
 理事を中心とした小児科医、保育研究者、助産師、栄養士、臨床心理士、歯科医師等の専門家による支援体制と、各種団体やボランティアと連携し事業の内容充実を図る。
 (ア)子育て中の親と子どもの交流に関する事業(パネルシアター、おはなし会等)
 (イ)子育てに関する相談  ・おしゃべり会(年齢別、テーマ別)・専門家相談(小児科医、臨床心理士、栄養士、助産師、歯科医師、保育士)
 (ウ)子育てグループ等の育成(地域との連携)
  ・遊びなどの指導者派遣  ・活動スペースの提供、活動の紹介
 (エ)子育てに関する情報の提供(掲示板、コーナーの設置)
 (オ)遊びに関する指導助言
 (カ)子育て情報誌の発行(子育て情報誌「じゃん・けん・ぽん」隔月の発行)
 (キ)子育て講座、イベントの開催(わんぱく散髪講座等子育て講座、コンサート、節分等の季節行事など)
 (ク)その他子育て支援に関すること(世代間交流事業、ボランティア団体、利用者の運営委員会キャッチボール隊等の活動)
(2)子育て中のお母さんのためのリフレッシュ講座
 子育てにゆきづまっている母親、子育てが大変そうな母親に参加してもらえるよう、ベビーサイン、アロマテラピー、ヨガ講座等母親たちの要望を聞き、託児付きで開催している。
(3)休日マタニティセミナー(長野市保健所との協働事業)
 「じゃん・けん・ぽん」において、19年度4月より月1回日曜日に、第1子出産予定の妊婦とその夫を対象(16組)に休日マタニティセミナーを開催している。内容は母乳育児や育児支援制度の講話、妊娠・授乳期の栄養指導と食事、赤ちゃんの世話や沐浴の体験実習等。指定日時の参加受け付けは、2台の電話で約15分で終了するなど好評である。

7 子どもの活動に取り組む人材育成事業
 家庭教育支援総合推進事業、子育て支援リーダー研修事業、緊急サポートネットワーク事業を活用し、家庭における子育てへの支援、地域における子育てサポーター、リーダーの育成を図っている。乳幼児の心身の発達の理解、傾聴、コーチング、コミュニケーション術などのテーマで資質の向上に役立っている。

8 子育てに関わる各種グループや、機関団体との交流促進事業
 平成15年より長野市在住の60歳以上の高齢者を対象にシニアアクティブルーム(長野市委託事業)を開催し、折り紙教室やパソコン教室などの受講生が、若い母親のためにリフレッシュ講座を開くなど世代間交流も活発である。

9 チャイルドライン事業
 「チャイルドラインながの」を平成16年から運営し、18歳までの子どもの悩みや相談電話の受け手となり支援している。

10 教育機関との連携
 長野県短期大学において、子育て中の親子20組を対象に長野県短期大学幼児教育学科立浪ゼミと連携し「もちっ子広場」を開催している。参加者から「もう少し回数を多くしてほしい」などの声が寄せられている。
 また、清泉女学院短期大学幼児教育学科、黒木学園、松商学園短期大学等教育機関と連携し、現在の子どもや子育て支援の状況の理解を図っている。


現在までの成果

1 こども広場「じゃん・けん・ぽん」の開設につながった。
 平成9年より任意団体として、子育ち・子育て支援、子どもの健全育成及び子育て環境の充実のため、地道な活動をしてきたことが、平成15年もんぜんぷら座へのこども広場「じゃん・けん・ぽん」の開設につながった。

2 地域の子育て支援の中核施設として、子どもや保護者の拠り所となっている。
 広場運営の創意工夫や各種相談業務、子育て講座の充実などにより、開設以来5年で、入場者数が30万人を超え、また、視察者も平成19年度249名を数えるなど地域の子育て支援の中核施設となっている。

3 地域における子育て支援のネットワークが広がった。
 こども広場での日常的イベントを、ボランティアが中心となって行なう回数が増えたり、各種団体やボランティアと連携し子育て支援のための講座を開催するなど、地域における子育て支援のネットワークが広がった。

4 依存的な子育てから主体的な子育てにつながってきている。
 絵本の読み聞かせや貸し出し、「ベビーマッサージ」「ベビーサインでお話ししてみませんか」等、赤ちゃんとのコミュニケーションを円滑にし、また母親の心のリフレッシュを図る講習会を開催したことにより、親子の読み聞かせやスキンシップの場面が増えた。
 年齢別おしゃべり会の後、自主グループができるなど、母親同士のつながりもでき、楽しい子育ての様子が見られる。また、お互いの相談の場となるなど、共に育ち合っている姿が見られ、依存的な子育てから主体的な子育てにつながってきている。

5 妊娠期から継続した子育て支援を行なうことができている。
 長野市保健所との協働事業「休日マタニティセミナー」は、妊娠期からの継続した支援を行なうことができる。またこども広場で行なうことは、グループ討議に来館者の父親から、子育ての先輩としての体験談を聞くことができる。子どもの様子や子育ての様子も直接見ることができる等、子育ての不安解消にもつながっている。

6 0歳から18歳まで隙間のない支援を目指して活動を続けている。
 「チャイルドラインながの」は、子どもから直接声を聞く貴重な場であり、年間約4000通の相談電話を受けるなど一定の成果と考える。
 現在は緊急性の高い乳幼児期にポイントを絞って支援活動をしているが、0歳から18歳までの隙間のない支援を目指して活動を続けていきたい。

7 空洞化していたまちに、子どもの声が聞こえるなど、子どもの声が響く活気のあるまちづくりに貢献している。