「あしたのまち・くらしづくり2007」掲載 |
<企業の地域社会貢献活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
障がい者との協働による廃食油の回収・BDF化とグラウンドワーク活動の推進 |
鳥取県米子市 サンイン技術コンサルタント株式会社 |
はじめに 近年では経済社会のあり方が大きく変化し、人々の価値観が多様化するなかで、住民一人ひとりが環境を含めた生活の豊かさを享受できる社会を目指していくことが、これからの地域づくりに求められ、大きな課題となっている。しかしその方策は行政主体の取り組みだけでは不充分であり、住民・企業サイドからの自主的・積極的な参加によるパートナーシップの構築が望まれる。 こうした中で、鳥取県では環境や福祉、街づくりなど様々な分野での住民活動が積極的に展開されている。とりわけ、今日的な課題として大きくクローズアップされてきている持続可能なライフスタイルや経済社会システムの実現を図るために、産・官・民・学のそれぞれの主体が環境に関心を持って、自分たちの行動責任と役割を果たしながら対処していく必要がある。それには、子どもから高齢者までの各年齢層に応じて、家庭・学校・地域・役所・事業場等それぞれの場で、人間と環境の関わり方、人間の活動が環境に及ぼす影響、自然の仕組み等環境に関する教育や具体的な学習を進めていくこと、さらには実体験を通じての感性や環境を大切にする心を育んでいくことが極めて重要となる。 地域の構成の一員である企業人の私たちは、社会に生きる者として当然のことながら「社会貢献の心」を持つゆとりが必要で、微力であっても社会のために尽力する姿勢は極めて重要と考える。このような趣旨に鑑みわが社が取り組みを行なっている環境を基軸にした社会貢献活動について紹介してみたい。 わが社の社会貢献活動 廃食油を車の燃料にする取り組み 「廃天ぷら油で車が走る!!」と聞くと嘘のように思われるかもしれない。当社・サンイン技術コンサルタント(株)ではこれまでゴミとして捨てていた廃てんぷら油を回収し、障がい者の就労施設(知的障害者通所授産施設)に導入した小型の食用油再生燃料化装置を使ってBDF(バイオディーゼル燃料)を製造、軽油の代替燃料としてディーゼル車を昨年2月より走行させている。メチルアルコールと触媒として水酸化カリを定量投入、一定時間・定温で攪拌処理すれば簡単にBDFが製油できる。本事業は特に障がいを持つ皆さんの雇用の場の創出を図るために、彼らに一定期間かけ教育訓練を行なって操業技術を習得して頂き、彼ら自身でBDFの製造が出来るようにしている。そのことにより彼らの就労自立社会参加の機会を増やすことができるようになり、地域住民との協働参画が図られるようになり循環型社会の形成に大きく寄与できる。 本事業では、各家庭や事業所(旅館・ホテル、料飲店、スーパー百貨店等)から排出される廃食油を回収するための拠点を住民参画により各自治体(公民館)や地域にある障がい者就労事業所(作業所)等に廃食油回収用ポリタンクを設置、廃食油を回収して頂くようお願いしている。われわれ社員と障がい者とが一緒になってこれを回収、集積した廃食油をBDF製造プラントで軽油代替のディーゼル燃料として製油し、販売・使用促進を図っている。 本事業は、地球温暖化防止と循環型社会の構築に極めて有益である。合せて、本事業は障がい者がBDFを製油し、その販売の業務を地域の一員として主体的に関わることは、彼らの働く場の確保はもちろん、彼らが地域で認められ、彼らの大きな収入源として生かすことが出来この上ない喜びであり、彼らの就労自立支援事業として大きく寄与できる。 廃食油100リットルからBDFが90リットル取れる。出来上がったBDFはそのままでも軽油を混ぜてでも使える。BDFの原料は、これまで捨てられていた廃食油で、これを再利用して資源循環型の新燃料を作る。すなわち、菜種など植物から作った燃料で車を走らせる。間接的には太陽エネルギーを燃料として使っていることと同じで、ディーゼル車のバイオ燃料は植物が緑の葉で太陽エネルギーを炭水化物等で作り変えて蓄えたエネルギーを利用していることによる。燃料を自分で作る。原料も自分で育てる。それを可能にするのがこのバイオ燃料であり、エネルギーの自給自足、地域のエネルギー自立、国のエネルギー的自立にも貢献できる。しかも化石燃料とちがって植物油だから、持続可能な地球に優しいエネルギーである。 当社ではBDF走行の効果を把握するため、排気ガスの環境調査を定期的に実施している。BDFで一番いいのは、黒煙が少ないことで、急加速しても黒煙が出ていることはほとんど分からない。黒煙濃度は軽油の場合30%弱に対しBDF走行の場合は10%台で、2分の1から3分の1程度に改善される。このクラスのディーゼル車に適用される規制値の40%を軽くクリアする。また酸性雨の原因となる硫黄酸化物は100分の1以下になり大気汚染防止に寄与できる。さらに廃食油に含まれる二酸化炭素は、食用油の原料である菜種等の植物が大気中から吸収したものであり、廃食油を燃料として発生する二酸化炭素は地球環境中の二酸化炭素を増加させないので二酸化炭素の発生の抑制効果がある。地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の削減が世界的規模で叫ばれている今日、その発生が著しく少ない次世代のバイオマスエネルギーとして注目を浴びるのも当然である。そして、排気ガスがかすかに天ぷら油の匂いがする。燃料単位量あたりの走行距離は軽油と変わらない。しかしBDFの単価が現行の軽油より1リットル当たり10円以上安いことからすると、軽油よりBDF使用の方がはるかにそのコストメリットは大きい。そのほかには ①石油等限りある化石燃料の保護に役立つ→循環型社会形成実現へ貢献できる。 ②100%の使用であれば、軽油取引税は課税対象外となる。 ③廃食油の回収で水質汚濁・土壌汚染等を防ぎ、BDFの製造・車の燃料としての再利用で排気ガスの大気汚染の防止等環境浄化に寄与できる。 ④BDFは車検表の燃料に「軽油」に加え備考欄に「廃食油燃料併用」と申請し運転ができる。 等BDFの導入メリットは計り知れないものがある。現在、当社のディーゼル車、障がい者施設「もみの木園」の通園バス、鳥取県の公用作業車等の車にBDFを使用し走行させているが、当社の運転実績をもとに行政機関のディーゼル車、市営バス等のBDFへの切り替えの働きを積極的に行なっていきたい。 グラウンドワーク活動(美化清掃活動) 『グラウンドワーク』とは、地域社会の構成員である住民・行政・企業の三者が協働でそれぞれが得意技を出しあって身近な環境を見直し、自らが汗を流して地域の環境を改善し、住んでみて良かったといえる美しく住みよい街づくりをするパートナーシップによる明日に向かっての環境改善を図る運動で、1980年代に英国で始まり、近年、日本でも全国各地で盛んになってきている。 すなわち、「グラウンド」という生活現場、身近な環境を対象として「ワーク」(創造活動)する、汗を流すということで、生活の最も基本的な要素である自然環境や地域社会を整備、改善して行く活動である。グラウンドワークは「議論よりアクション」「論より実践」が原則。地域を構成する住民・企業・行政の三者が、それぞれお互いの立場を尊重しながら地域や町内の問題に対して知恵とアイデアを出し、今の環境をこれ以上悪化させず、地域が個々に保有している自然環境や景観、歴史的な構造物、文化、風習、風土など地域の宝物、地域資源をグレードアップして、現在失われつつある好ましい環境を取り戻していくための具体的な創造活動であり、これまでの古いものを壊して新しいものを作るという活動とは全く異なる。このことにより、失われた地域のコミュニティが再生され、住民主体のまちづくり、ボランティア活動の場づくり、企業の社会参加、行財政費の圧縮・低減などその波及効果は計り知れないものがある。 当社・サンイン技術コンサルタントでは、昨年5月から社長の経営方針の社会に生きるものとして「社会貢献の心」をもつゆとりが必要であるとの基本的な理念に基づき、毎月1回、勤務を終えた後1~2時間全社員で交通量の多い当社~米子駅前周辺、当社~公会堂までの2グループに分かれ約片道約1.5キロの道路、側溝、街路樹歩道等にポイ捨てされている空き缶、空き瓶、発砲スチロール、お菓子等の空き袋の収集を行ない、美化清掃をして皆でいい汗をかいている。汗をかいた後、街が本当にきれいになっているのでとても爽快だ。最近では一部の市民の方や、鳥取県西部総合事務所の県職員の方、山陰合同銀行社員の多くの方々もこの活動に自然体で参加して頂いている。その数も回を重ねるごとに増えてきており参加した皆さんとコミュニケーションを図りながら美化清掃を行なっている。本当にうれしいことだ。いい汗をかいた後、みんなでお酒を酌み交わしつつ、その日行なった美化清掃の反省と次月の活動について和気あいあいとした中で話し合いをする。まさに『右手に環境改善のスコップ、左手に缶ビール』のグラウンドワークの環境創造の取り組みだ。身近な環境をよくするも、悪くするも住民一人ひとりの行動次第だ。当社では、大山や中海、米子水鳥公園等自然環境のよい、きれいな米子市に県内外の多くの皆さんに足を運んで頂くため鳥取県内の一企業として『住んでみて良かったと言える誇れる街づくり』を目指してグラウンドワーク活動を今後も継続実践していく。 まとめ 以上、わが社の環境改善を基軸にした社会貢献活動の一端を述べた。昨年5月から始めたグラウンドワーク運動は行政の皆さんや地域の皆さんも自然体で参加して頂く兆しが見えてきて誠にうれしい。 「住んでみてよかった」と誇れる街づくりを皆さんと協働していい汗をかいていきたい。 環境立県・地産地消を目指す鳥取県が廃食油の回収を呼びかけ、各家庭や料飲店・スーパー・百貨店等で発生する廃食油を各ステーションで回収する。そして、その廃食油を障がい者の皆さんと一緒になっていい汗をかきながらバイオディーゼル燃料(BDF)を製造し、県内の大半のディーゼル車をBDFに切り替え走行することが出来たら本当にすばらしいことだ。県民の環境意識の高揚の視点からしても意義ある取り組みと考える。再生可能な資源の利用を促進するため、鳥取発の取り組みとして産・官・民・学がそれぞれ得意技を出し合い何とかして具現化したいものだ。その基礎部分の構築を図っていきたい。 |