「あしたのまち・くらしづくり2007」掲載
<企業の地域社会貢献活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

良き銀行員である前に、良き社会人たれ
茨城県水戸市 常陽ボランティア倶楽部
はじめに

 地域とともに生きる地方銀行にとって、地域貢献活動は大きなテーマである。
 常陽銀行(以下、「当行」という)は、水戸市に本店を置く地方銀行で、1935年の創業以来、金融サービス業として地域社会の発展に寄与、「地域社会とともに歩む『良き企業市民』として、積極的に地域貢献活動に取り組む」を企業倫理として掲げ、全国金融機関初の「手話の窓口」設置をはじめ、地域貢献の「一部室店一貢献運動」を積極的に展開してきた。
 このような職場風土の中、1994年10月1日、行員個人レベルの自発的なボランティア活動を支援する組織として「常陽ボランティア倶楽部」(以下、「倶楽部」という)が誕生した。これは、本来個人レベルで活動するボランティア活動を銀行が後押しする形で設立されたものである。


活動の記録(6分野の自主的な活動)

企業概要(常陽銀行)
・業種       金融サービス業
・本店       水戸市南町2丁目5番5号
・拠点       国内:173店舗、海外:1駐在員事務所
・従業員数     3581名(2006年9月末現在)
・経営理念     『健全、協創、地域と共に』
・地域貢献担当部署 経営管理部常陽ボランティア倶楽部事務局
 倶楽部には現在、役員、行員、グループ会社社員を含め約3200名の会員が登録され(年間1200円)、事務局を経営管理部内に置き、運営を担当する幹事26名は、ボランティア経験の豊富な行員から適材適所に選出し、年2回開く幹事会で運営方針や行事等を自主的に決定している。
 活動分野は、①福祉関連(福祉施設行事参加等)、②スポーツ指導・交流(スポーツ大会運営支援、審判等)、③環境問題(環境保護・クリーン作戦等)、④国際交流(留学生との交流・通訳・ホームステイ受入)、⑤イベント協力(地域イベント運営支援等)、⑥資金協力(災害募金・車椅子・高齢者擬似体験品寄贈)の6分野からなり、会員は自分の好きな分野を選択でき、複数の分野への参加も可能となっている(それぞれの分野におけるここ1年の主な活動は表1を、過去11年の分野別活動は表3を参照されたい)。
 近年の具体的活動事例を挙げれば、「ボランティア福祉講座」の開催、国際盲人マラソン大会のガイドヘルプ、水戸梅まつり・土浦花火大会・波崎海岸・渡良瀬流域等の清掃、茨城県および各市町村身障者スポーツ大会の運営支援、筑波大学・茨城大学留学生との交流会開催、ドイツ・イタリア芸術文化団体との交流支援、全日本大学女子選抜駅伝・つくば・勝田全国マラソン大会等の運営支援、タオル1人1本提供運動、使用済み切手・テレカ収集活動などがあり、広範囲にわたっての活動が活発に展開されている。
 なお、これら10年余の活動が評価され、環境保全茨城県会議より褒賞(2002年)、金融機関としてはじめて厚生労働省・勤労者マルチライフ支援事業推進会議(会長・堀田力)より第1回勤労者ボランティア「ナイスアシスト賞」を受賞(2003年)するとともに、茨城県社会福祉協議会会長より「社会福祉事業功労者」表彰(2002年、2006年)を受けている。

表1 ここ1年の主な活動(分野別)
分 野 主な活動(2006年)
①福祉関連 福祉施設の各種まつりやイベント、県・市身障者スポーツ大会の運営、手話通訳協力、「赤十字救急法」一般講習会の開催
②スポーツ指導・交流 全日本大学女子選抜駅伝、全日本学童軟式野球大会、知的障害児サッカー大会運営、県内四大マラソン大会の運営協力
③環境問題 河川、海岸、土浦花火大会、水戸梅まつりクリーン作戦、県地球温暖化防止委員に30名委嘱、ブナ林保存運動、涸沼環境フォーラム参加
④国際交流 茨城・筑波大留学生とのバスツアー研修・交流会開催、ホームステイ受入、国際大道芸大会支援、県内イタリア・ドイツとの芸術文化団体への通訳・運営支援
⑤イベント 水戸JC「ちびっ子広場」、福祉施設のイベントや市障害者スポーツ大会、「まなびピア2006」へのスタッフ派遣
⑥資金協力 ボランティア活動を資金面で支援するもので、寄付金はボランティア活動の交通費、環境保全寄付金、歳末助け合い寄付金等に充当

表2 ボランティア参加状況
年度 ボランティア活動状況 参加者数
15年度 49件 1179名
16年度 50件 1107名
17年度 57件 1713名
18年度 62件 1261名

表3 年度別分野別活動表
福  祉 スポーツ 環  境 国  際  イベント 資  金  事務局 合  計
8年度 10 33
9年度 10 51
10年度 10 36
11年度 16 11 60
12年度 18 50
13年度 23 53
14年度 12 16 55
15年度 10 12 49
16年度 50
17年度 11 20 57
18年度 10 20 62
合 計 85 74 82 44 31 85 155 556
(注)年度別分野別個々の活動は年度別活動の記録参照。


ボランティア活動の成果

 前述したとおり、当行は従来から、地域とともに生きる金融機関として継続的に地域貢献活動に取り組んできた。その基本理念は「良き銀行員であるまえに、よき社会人であることを最終目標として掲げている。
 倶楽部設立当時、ボランティア活動に目覚めている行員は少なく、個人的にクリーン作戦や地域の観光ボランティアのお手伝いをする程度で、大半の行員は「ボランティアにはどんなものがあって、どうすれば良いのか」が分らない状況である。
 倶楽部設立を機に、代表幹事を中心に事務局のサポートを受け、「今、自分たちの分野でできるものは何か」を討議し、それぞれが自主的に支援の幅を広げてきた。
 設立して12年を経、全ボランティア会員の年間スケジュールの中に支援活動が自然に織り込まれる等、最近では、行員のボランティア意識が確立しつつあることを確信している。
 職場では声を掛け合い、参加を促すようお願いしているので、近年では年間62回を超えるボランティア活動に1700名以上の会員が参加している状況にある。
 また、活動の際、家族連れで参加する会員も増えてきている。これらの活動が行員の視野を広げ、「会社人」から「社会人」への意識改革に役立っていると評価している。
 銀行を退職した先輩たちのアンケートを見ると、それぞれの地域社会で、各種のボランティア団体、地域役員、NPO等で活躍する人が数多く続いており、当行ボランティア倶楽部の理念に沿った、望ましい方向で確実にその精神が継続されている。


おわりに

 当行ボランティアは長年にわたる幅広いボランティア活動に取り組む企業としての全国的な高い評価が定着しつつあり、最近ではその奉仕振りがマスコミや雑誌に取り上げられる機会が多くなってきた。
 反面ではまだ、当行ボランティアの奉仕活動はすべて銀行の資金援助で賄われているのだろうとの誤解を受けることもある。しかし、当倶楽部の運営資金は銀行からの支援金によるのではなく、100%ボランティア会員からの寄付金で賄われている。
 現在、地方自治体、社会福祉施設、NPO法人のイベント等の支援は年間62件、約1700名となっている。
 また、年々それぞれの団体からの支援要請や組織立ち上げに関する相談等に来られる方が増加傾向にある。事務局として出来るだけ多くこれらの要請に応じられるよう、ボランティアの趣旨やイベント内容、地域、公平性を念頭に全体的なスケジュールを調整しながら採択に努力している。
 今後とも、常陽ボランティア倶楽部を預かるものとして欧米のボランティア先進国のそれを参考に「真に地についた長続きするボランティアとは何か?どうあるべきか?」を常に念頭におき地域貢献活動に努めたいと考えている。