「あしたのまち・くらしづくり2007」掲載 |
<企業の地域社会貢献活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
住民主体による「地域づくり活動」推進プロジェクト |
宮城県仙台市青葉区 東北福祉大学ボランティアセンター |
はじめに 東北福祉大学ボランティアセンターは地域住民・学生の自主的なボランティア活動の支援、地域社会の一員として地域社会貢献(地域社会還元)活動を実践することを目的とし、平成10年に設立されました。センターではボランティア・地域活動による地域活性化(地域づくり)をめざし、関係機関・団体、地域社会と連携・協働した活動を展開しています。 住民主体の「地域づくり活動」の推進・支援 センターでは住民一人ひとりの創意工夫を発揮したボランティア・地域活動による「地域づくり」を支援するため主として四つの取り組みを行なっています。①ボランティア・地域活動に関する情報収集提供及びコーディネート、②地域住民が相互交流・相互学習しあう場・機会の創出、③関係機関・団体との有機的ネットワークの構築、④現代的・地域的課題解決に資する人づくり・地域づくりの推進です。主な取り組みを紹介します。 (1)ボランティア・地域活動に関する情報収集提供及びコーディネート ○ボランティア・地域活動情報の提供及びネットワーク化の推進 センターでは県内外から寄せられるボランティア・地域活動情報の提供を行なっています。センターの窓口は常に開かれており、掲示板、ファイルのほかインターネット・メール・コミュニティエフエム等のマルチチャンネルで情報発信しています。 平成15年度には、仙台市社会福祉協議会と「パートナーシップ協約」を締結し、ボランティア情報の共有化や福祉・ボランティアを担う人材育成、地域福祉推進事業等を協働で推進しています。共有化した情報はホームページ(http://www.tfu.ac.jp/volunt)において公開しており、関係機関・団体もセンターの情報検索システムを活用するなど、モデル的なシステムとして機能しています。このような基盤もあり、センターに寄せられるボランティア依頼は年間2000件を超えています。施設や学校、NPOなど団体からの依頼だけでなく、託児や在宅高齢者・障害児の見守りなど個人依頼も紹介しています。 その他、宮城県共同募金会・宮城県ボランティア協会の協力による「ボランティア映画」の上映、「ボランティア手帳」の作成、「オリジナルバッジ」及び「ボランティア学習DVD」の制作など、多様な機会・ツールを通じて、地域づくり活動の活性化を図っています。 ○学生サークルによる出前講座等のコーディネート 本学には70を超えるボランティア系サークルがあり、小・中学校における「総合的な学習の時間」や市民センター主催講座における「キャップハンディ体験」や「災害時非常食炊き出し体験」等の出前講座をセンターでコーディネートをしています。平成18年度には個人・サークルを含め1200名を超える学生をコーディネートしています。 また、本学では子どもの健全育成を目的とし、学生が児童・生徒の学校生活支援や不登校の子どもたちの対応に関すること等を連携・協力して行なうことを謳った「連携協力に関する覚書」を平成15年度に仙台市教育委員会と締結しています。平成16年度から現在まで、約260名の学生が登録し、学習や部活動の指導、行事支援活動等を行なっています。 (2)地域住民が相互交流・相互学習しあう場・機会の創出 ○フォーラム・公開講座の開催 地域住民や活動家、専門家、学生などが現代的な課題について、相互に意見・情報を交換するフォーラム・公開講座を開催しています。これまでのテーマは「総合的な学習の時間における『福祉・ボランティア学習』、「学校週5日制導入と地域の教育力」、「災害救援ボランティア・地域減災を考える」等です。 (3)関係機関・団体との有機的ネットワークの構築 ○地域社会とのパートナーシップの強化 仙台市、仙台市社会福祉協議会など産学官民が一体となって組織した「地震に強いまちづくり実行委員会」の文部科学省「生涯学習まちづくりモデル支援事業」(平成16年度)による地域防災を担う人材育成及び地域啓発事業を契機に連携・協働体制が強化されています。さらに、ボランティア活動、子育て支援などの現代的・地域的課題解決に資するために、行政・NPO・企業など24団体と「覚書」・「協約」を締結しています。多様な地域活動を継続的に展開できるようプラットフォームづくりを推進しており、「覚書」・「協約」締結団体等との連携講座も毎年10回程度開催しています。 (4)現代的・地域的課題解決に資する人づくり・地域づくりの推進 ○「ものづくりボランティアリーダー」養成講座の開講 地域全体で子育てに関わっていくきっかけづくりとして、わが国が長年培ってきた伝統・文化である「ものづくり」をテーマとした「ものづくりボランティアリーダー」養成講座を開講しています。これまで「創作」、「日本食」、「工芸」など6コース15回開講しており200名を超える市民、学生が楽しみながら相互学習しています。 ○「TFU(東北福祉大学)こども広場」の開催 知・心・体のバランスがとれた、感性豊かな子どもの育成を目的に、平成16年度より小学生を対象とした「ものづくり」や「スポーツ」などの体験活動広場を開催しています。これまで「防災マツプづくり」、「護身術」など18コースを設けており、参加者は約400名となっています。平成19年度は本学学生ボランティアサークル「匠民」と協働で、「ものづくりから“夢”づくり」のコンセプトのもと、「ユニバーサルスポーツ体験~元気な体づくり~」、「種・苗植え体験~いのちを学ぶ~」、「写真立てづくり~思い出を飾ろう~」などの広場を開設しています。 ○被災地における災害復旧支援活動の実践 被災地の復旧・復興に資するため、福祉・心理的な知識や技術を生かした災害復旧支援活動(主として心のケア)を展開しています。これまで、阪神・淡路大震災(平成7年)、宮城県北部地震(平成15年)、新潟県中越地震(平成16年)においても全学的に被災者支援活動を実践しています。 今後の展望~市民・学生・大学が一体となった「住みよい地域づくり」をめざして~ 価値観の多様化時代におけるセーフティネットの構築にはボランタリーセクターの果たす役割は大きいと考えます。そのために、以下の3点を中心に推進します。 ①市民・学生・大学が一体となったセンターづくり 地域における多様なニーズに対応するためには、住民同士が主体的に課題解決に向け取り組むことが求められます。また、より個性・魅力ある地域づくりを進めるためには、地域社会の資源・情報・ノウハウを総合化する仕組みが必要となります。そこで、センターでは平成18年11月より出会い・ふれあい・学びあいの機会づくりを目的とし「ボランティアカフェ(サロン)」を常設しています。「カフェ」は一人ひとりの「思いや気づき」を世代を越えて共有しあったり、具体的な行動・実践の触発、さらにはボランティア・地域活動の成果発表・情報発信の場となっています。 今後も地域ニーズに即した取り組みを行なうために、一人ひとりの「声(意見・提案・工夫・知恵など)」を募集し、企画・プログラムづくりに反映していきます。 ②団塊世代の地域エネルギー化の推進 「団塊世代」の大量定年は「安全で安心な地域づくり」の機会でもあります。そこで、「団塊世代」が長年培ってきた知と力を地域活動に結びつけるために、「団塊世代」の地域デビューや地域課題の解決を担う「人づくりのための人づくり」を推進し、地域教育力の再生による地域活性化を図ります。 ③「多文化共生地域づくり活動」の実践 近年、グロバール化の進展により外国人が増加しています。国際社会の一員として多様な文化的背景を持つ人々が安心して暮らすことができる多文化共生地域の実現に向けた活動を推進します。このことは、「日本らしさ」や「地域らしさ」の意識化やわが国や地域社会に対する誇りと自覚を促し、よりよい地域づくり活動の原動力になると考えます。 さらに、これらの取り組みを通じて得た「気づき」や「学び」を重視し、地域社会、関係機関・団体との協働による地域創造をめざします。ボランティア・地域活動による「人・もの・こと」との出会いの場・機会づくりを通じて、住民同士が強い絆で結ばれた豊かなコミュニティ形成に貢献したいと思います。 |