「あしたのまち・くらしづくり2007」掲載
<企業の地域社会貢献活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 内閣官房長官賞

出前防犯授業「ALSOKあんしん教室」
東京都港区 綜合警備保障株式会社
ALSOKあんしん教室の目的

 ALSOKは経営理念である「ありがとうの心」を実践するため「ALSOKありがとう運動」など、従来から様々な分野で社会貢献活動に取り組んできています。昨今、犯罪認知件数は減少傾向にありますが、残虐な凶悪犯罪、児童を狙った犯罪は増加しており、社会の不安(体感治安)が増していると言われています。そこで、われわれ警備業務で培った知識(地域の治安情報、登下校路の安全対策、巡回のポイント、護身術、緊急連絡手段等)が社会の役に立てないかと考えました。
 様々な案のうち、継続性が保てること、本業の延長でできることを重視し、「現役ガードマンによる出前防犯授業」を行なうことにしました。これは、子どもたちへ「自分の身は自分で守る、生きる力を身に付けさせる」こと、「本物」を見せ・伝えることを目的とした活動です。
 例えば、「防犯ブザーを持ちなさい」といっても、子どもたちは忘れてしまいます。「持つ理由」「どんなとき使うのか」「使い方」を教えて、初めて用具が生きることと思います。単なるハードの整備だけでは、子どもは守れないと考えております。


経 緯

2003年10月
 神奈川県茅ヶ崎市立浜之郷小学校で授業支援を実施
 ※故大瀬校長の「命の授業」に共感し、われわれ企業市民として何かできないか沈思黙考した。
2004年4月
 若手社員中心(ボランティア)で、指導案の開発着手
2004年10月
 「ALSOKあんしん教室」の試行(地区限定:神奈川県)
2005年4月
 「ALSOKあんしん教室」全国展開
2006年3月
 児童数10万人突破
2007年4月
 47都道府県の小学校において、あんしん教室を実施
2007年6月
 児童数30万人を突破


活動実績(2004年10月~2007年3月)

活動期間 対象エリア 学校数 授業数 児童数
2004年10月~2005年3月(6か月間) 神奈川県限定 42校 158回 5058人
2005年4月~2006年3月(1年間) 全国 708校 3181回 9万9226人
2006年4月~2007年3月(1年間) 全国 888校 5612回 17万5445人
累計(2年6か月) 1638校 8951回 27万9729人


参加社員数

 「教育の継続性」と「登下校路や地域の治安情勢に熟知している」事業拠点の社員約1000名が授業を行なっています。また、指導品質のチェックや新たな指導案の開発等、本社広報部に専従者4名の体制を整えています。
 また、講師の育成には独自の社内規定(あんしん教室マスター認定制度)を設定し、指導・訓練・社内試験を行なっています。


成果と影響

(1)反響(まとめ)
 「実践的な防犯授業」「緊張感と楽しさのある授業」「指導案・教材・講師の質がよい」と数多くの意見をいただきました。実施後のアンケート(教職員、保護者)を分析した結果、95%以上の方から、「やってよかった」との意見をいただいております。(集計数:約3000名)
 また、あんしん教室を受講した児童が、登下校中、不審者からの誘いがあり、授業で学んだことを実践し、難を逃れたと感謝の声をいただいております。(複数)
(2)反響(詳細:アンケート内容の抜粋)
①教職員の声
・大変役立つ素晴らしいものでした。体験活動とガードマンの制服による授業は臨場感があり効果的でした。通常の授業や研修、講演会では得られないものでした。
・命や安全に関わる仕事に携わっている人から直接話を聞けることが貴重な体験でした。
・同じようなことを指導しても、プロの方の言葉は子どもの心に響くと思いました。また、演出の仕方もよく、印象的でした。子どもたちも楽しく学んでいました。
・指導する方々が子どものことを考え、話し方、進め方、教える内容をよく考慮し、実施していただいたことが、よくわかりました。子どもの目線に合わせた話し方穏やかな口調で、興味を引くような提示が良かったです。
②保護者の声
・子どもが「わかっているだろう」とあたり前に思っていたことが、わかっていないのに気がつきました。
・子どもたちの興味をそそってあきさせないように工夫されており内容を理解してほしいという社員の方々の熱意が感じられました。また、実際に大声を出したりする経験は、とても良いものだと思います。
・子どもは知らない人でも笑顔の人とか名札をつけている人などには結構簡単について行ってしまう可能性があることがわかりました。
③児童の感想
・いかのおすしをおしえてくれてありがとうございました。ぜったい知らない人にはついていきません。
・車においかけられたら、車の後ににげるということを初めて知りました。
・人を見た目ではんだんしてはいけないということも守りたいと思いました。
④参加社員の声
・あんしん教室の活動は、自分自身の意識も変え、ALSOK社員として誇りに思える活動だと感じています。
・あんしん教室を通じて部下を連れて行くときなど、彼らの顔が非常に引き締まっていくのを感じました。うちの支社では現役のガードマンが教壇に立つことが多いのですが、本業でより前向きにがんばる隊員が増えてきたことに感動を覚えます。
・児童に防犯を教えるだけでなく、私たち大人が教えられることがある、それがあんしん教室だと思います。


防犯教育の普及活動

 全国には小学生が700万人以上、全員の子どもにあんしん教室を受講してもらうには多くの年月がかかります。また、防犯教育には『反復』することが一番重要であると捉えており、書籍等を通じた防犯教育の普及にも努めております。
【実績】
(1)「ドラえもん あんしん・あんぜん教室」(小学館発行)ALSOKあんしん教室監修
(2)「お父さんは子どもを守れるか」(日本文教出版発行)ALSOKあんしん教室編著
(3)「しまじろうのあんぜんかみしばい」(ベネッセコーポレーション製作)綜合警備保障監修


今後の展開

 われわれは、「児童の連れ去り事件が日本社会でゼロになる日」まで、ALSOKグループが一丸となり、継続していきたいと考えております。また、社会ニーズに即した新たな授業の開発や、防犯ノウハウの提供活動(出版物等を通じ)を今後取り組んでいこうと考えております。