「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載 |
<企業の地域社会貢献活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 内閣総理大臣賞 |
一人ひとりが美しい地域づくり、心づくりに目覚める |
秋田県秋田市 むつみ造園土木株式会社(秋田グリーンサム倶楽部) |
はじめに 昔、不思議な親指(thumb)を持つ少年がいました。少年はいろいろなものに触れ、花と緑をいっぱいにして人々の心を和ませました。当社では少年の親指にあやかり、花と緑を多くの人たちと共有していこうというネットワーク「秋田グリーンサム倶楽部」を立ち上げました。花と緑を愛する人ならどなたでも参加できる気軽な会です。会の活動テーマは「一人ひとりが美しい地域づくり、心づくりに目覚めること」です。 活動の内容としては、海岸林の清掃、地域交流と文化活動の推進、ホタルの放流等があげられますが、目的はあくまでも花と緑に囲まれた豊かな郷土づくりと人々の楽しい交流を広げることです。 以下に具体的活動内容について報告します。 海岸林の清掃 秋田市の北隣に位置する天王出戸浜海岸は、雄物川河口から八郎湖河口までの延長約15キロメートルの黒松林に覆われた海岸です。かつては天然砂浜海岸で黒松林と相まって白砂青松の風光明媚な海岸として知られていました。しかしながら最近ではそのほとんどが人口海浜としてコンクリートブロックで覆われ昔の面影はありません。この黒松林は、先人たちが幾多の失敗を繰り返しながら、冬の季節風による飛砂を防止するために植林した貴重な先祖の贈り物です。今では「夕日の松原」と名づけられて愛されています。 その貴重な松林が近年の松くい虫被害でほぼ壊滅的な状態となってしまいました。ただし、ここ天王出戸浜地区だけは沿岸住民や秋田県立大学の必死の防除のおかげで比較的被害の少ない状態で今日に至っております。ところが、この松林に最近ゴミの不法投棄が目立つようになりました。保安林として管理している県でもその対策に苦慮しておりました。黒松が大きくなり人目につきにくいのと、林内の管理道路が車で自由に出入できることが主な原因と思われます。 当社では、職種柄、地域柄、海岸工事や海岸と平行して走る県道の工事をさせていただくことが多く、なんらかの形でこの松林に恩返しできないものかと考えておりましたが、日頃から林内のゴミの不法投棄を憂慮していた複数の社員から、林内清掃の話が持ち上がりました。早速当社では「捨てないこころから拾う手へ」をスローガンとしてプロジェクトチームを立ち上げ、平成7年7月に第1回「フィロス秋田」と称して活動を開始しました。 当社の呼びかけに賛同した協力企業30数社の社員や重機、ダンプを含め第1回目の陣容はおよそ以下のとおりでした。 参加者 300名 ダンプ 25台 バックホー 5台 その他、軍手、タオル、デレッキ(はさみ)、昼食、飲み物を人数分、ゴミ袋5000枚となっております。当時の詳しい記録がないため、おおよその数です。 とても暑い日でした。社長の訓示後、号令一下各受け持ち地域に散った作業班は、風がなく蒸し暑い林内で全員汗だくになり、必死にゴミと格闘したのを今でもはっきり覚えています。2日がかりで出たゴミの量はダンプ100台分、200トンに昇りました。 当初は、ゴミ焼却場への手続きや、保安林内への立入許可申請、タイヤ・バッテリーなどの処分費負担など、当社並びに各協力業者の労力的、金銭的負担は相当なものでした。しかし、ゴミだらけの林をきれいにすることができた達成感はお金に替えられない貴重な体験でした。終わったあとの全員での慰労会で飲んだビールのなんとおいしかったことか。 以来、今年で12年目を迎えた「フィロス秋田」は、折からの建設不況で参加できなくなった企業が何社かあったものの、新規参加もあり規模的には平衡状態のまま今年に至っています。平成10年からは軍手、タオルが保安林を管理する県から支給されるようになり、さらに沿線の東北電力や秋田県立大学などの大口の協力者も加わり、地域一体型ボランティアとして根付いてきた感があります。そして、平成14年からはついに林を管理する県が主導的役割を担うようになり、当社としての目標はほぼ達成できました。当初掲げたスローガン「捨てないこころから拾う手へ」をモットーにした「フィロス秋田」はその理念とともに、名称も脈々を生き続けています。今後とも、当社ではここ天王出戸浜海岸「夕日の松原」を守り続けたいと考えております。 地域交流と文化活動の推進 (1)沿道緑化活動 当社天王事業所が位置する出戸新町は、秋田市中心部から車で30分、戸数約800戸の比較的新しい住宅地です。JR出戸浜駅に近く秋田市内に通勤するサラリーマン世帯が多いところです。この地区は碁盤の目のように区画割りされ、沿道は延べ4000メートルになります。当社ではこの沿道を花と緑でいっぱいにして、豊かな魅力ある街づくりをしたいという計画を立て、平成16年から沿道緑化活動を実施しております。初年度は沿線住民の比較的有休地の多い家庭をターゲットに家族の同意を取り付け早速緑化活動に取り掛かりました。 当初は、材料、労務とも当社から無償供与し、約200メートルの区間を家族の方と一緒に、生垣と花でまとめました。水やりや除草などで何かと手間のかかることが多く、われわれ社員も早出残業や休日出勤で管理を行なっておりましたが、徐々に木も根付き今では住民の協力を得られるようになり、通勤通学や散歩をする人々の心を癒すフラワーロードとなりつつあります。 昨年は、駅前道路200メートルも花植え運動を行ない、こちらも住民の協力をスムーズに得られ感謝されております。 まだまだ緒についたばかり。町内すべての沿道を緑化するにはコストもできるだけ抑えなければなりません。そのため昨年から生垣用の苗木を1万本挿し木しました。今年も来年も続ける予定です。 何年かかるか分かりませんが、地域の交流が密になり住民のこころがひとつになったとき、自発的な緑化活動ができるようになると思います。街づくりは人づくりからの理念で今後も続けたいと思っております。 (2)文化活動の推進 文化活動の推進のために当社敷地内にある施設を利用して様々なイベントを実施しております。 ①イベント 年2回の感謝祭の折、地元で活躍するユニークな方々や著名な先生方を講師として招き、各種講演やトークショーを開催しました。さらに、ヴァイオリンやマンドリン、大正琴のコンサートも合わせて開催しました。日頃、ヴァイオリンの生演奏を聴く機会のない地元の奥様方には特に好評です。今年も、来る6月10日に中央から著名なソリストを招き、ヴァイオリンコンサートを予定しております。年末のクリスマス感謝祭では、各自腕を振るった料理を持参してのにぎやかパーティーとなり、歌ありゲームありと盛りだくさんです。企画運営はすべてグリーンサム会員の方々の手作りパーティーとなっています。 ②展示会及び体験教室 平均月1回のペースで各種展示会を開催しております。最近の主なもので、さつき盆栽、樹脂粘土、陶器、土人形、つる細工、ポーセラーツ、押花等です。来る6月9日~6月18日の10日間では、書道、絵画、ポーセラーツ、万年青、さつき、ランの6展示会を連続開催する予定です。ごく身近にいる作者たちに来場者も新鮮な驚きがあるようです。また、展示に合わせて体験教室も同時開催しております。 ③講習会 定期的にパン作り、料理教室、寄植教室、剪定講習会等の各種教室・講習会を実施しております。どの講習会もグリーンサム会員の自主運営となっておりますが、寄植と剪定については当社社員が講師となりきめの細かい指導を行なっております。特に、剪定講習会は1週間連続して行ないますので、講習修了者はプロ顔負けの技を身に着ける方もいらっしゃいます。 ④古代米作り体験学習 昨年から、当社敷地内の一角に水田をつくり、秋田市内の幼稚園児に古代米の体験学習をさせています。田植えに始まって稲刈が終わるまでの一連の作業を、子どもたちと先生や保護者とともに時には泥んこになりながらの楽しい体験です。秋には収穫した古代米(赤米)でおいしい赤飯を子どもたちと一緒にいただきました。当社社員の中には古代米を自宅に持ち帰り、ピンク色のオリジナル銘酒(迷酒)を作り、同僚に振る舞った人もおります。今年はさらに規模を拡大し、地元の小学生に是非田植えを体験させてやりたい旨を学校に話しかけたところ、早速賛同して下さり、つい先日(5月26日)田植えを行ないました。秋の稲刈りも体験してもらう予定です。 ホタルの放流 近年、八郎湖の水質悪化が著しく、各種団体が八郎湖の水質浄化運動を呼びかけているものの、いまだ具体的活動は乏しく一向に改善の兆しは見えないのが実情です。 当社では水質改善運動の一環として、水源となる上流地域での水質保全に対する意識を高めようと平成15年から、ホタルの幼虫放流活動に取り組んでいます。初年度は飼育方法も手探り状態で思うような結果を残せず、約200匹の幼虫を育てるのが精一杯でした。 その後、いろいろな本を参考にし、実際にホタルの飼育をしている方から直接指導を受けたりしながら、2年目はなんとか3000匹の幼虫を育て上げることができました。その間、ホタルの生態や生育環境、水質等についても随分勉強させられました。 昨年は、種ボタルの採取地区である井川町井内地区の井川に恩返しの意味で幼虫を約800匹放流しました。この地区は近年ホタルが復活し始め、現在では県内でも有数のホタル狩の名所となっております。地区では、数人のお年寄りがホタル保存会を結成して、毎晩観察し日誌に記録するほどの熱の入れようです。このホタル保存会は、町の教育委員会と協力して現在の状態を維持するために是非ホタルの人口飼育に取り組みたいと考え、県内各地で飼育されている方々を視察されたそうですが、期待するような成果が得られそうもないということで半ばあきらめかけておりました。そこへ当社から放流の話があり、飼育方法などの説明を受け、今後前向きに考えていきたいということでした。 放流当日は、近隣の子ども、親、保存会、教育委員会の方々総勢40人あまりが集まりました。ほとんどの人が幼虫を見るのは初めてということで、ものめずらしそうにながめていました。 秋田の昔ながらの自然を取り戻し、ホタルが乱舞する里山と水環境を地元の人たちとともに創ることが当社の夢です。まだまだ勉強不足、体験不足ですが今後も息長くこの活動を続けたいと考えております。 最後に 種々種雑多な活動報告に終始してしまいましたが、一貫して「一人ひとりが美しい地域づくり、心づくりに目覚めること」のテーマに沿って活動してきましたことは自負しております。 地元企業は地域に育てられているという感謝のこころを忘れずに、今後さらなる精進を重ね日々の業務に励みたいと考えております。 感謝合掌 |