「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

和と輪を広げよう私たちのまち―一人の強い思いが地域友好のかけはしに―
東京都墨田区 カット倶楽部

 墨田区の最北端地域の堤通地区に防災拠点となる白鬚東アパートが建設され、昭和53年から順次完成、入居が始まり、56年には13階建ての都営住宅15棟、コーシャハイム1棟、備蓄倉庫2棟、駐車棟の全てが完成し、2300世帯、8000人が住む一大防災団地が誕生しました。その後、周辺整備が進み、昭和61年には大地震発生の際の広域避難所としての機能を持つ都立東白鬚公園も完成し、発災時の避難場所と避難民の受け入れ態勢が整いました。


カット倶楽部誕生!!

 再開発により新しく生まれた防災団地は、以前からの住民が25%、新住民が75%という特異なまちの形態となり、横に繋がっていた下町独自の地域連帯が1枚のドアで隔絶されてしまいました。日々、コミュニケーションが希薄な町と変わりゆく現状に危惧を抱いた人たちが中心となって、昭和63年にカット倶楽部を結成し、地域連帯を図る各種イベントを企画、運営を行なう活動を始めました。
 発起人は地元で喫茶店「カットハウス」経営の坂井紘彌さんと地域の有志で、防災団地内の広場を利用して、身障者施設支援のために年4回、フリーマーケットを開催。当時はフリーマーケットのハシリで、開催の度に大好評で多くの地域の人々で賑わい、活況を呈し、広場では手狭となって3年後には東白鬚公園内に青空フェスティバルとして規模を拡大、出店希望者を広く募り、物産、リサイクル品、模擬店、善意の業者も参加可能なフリーマーケットを月に1回開催することになりました。それに伴い、運営母体として「カット倶楽部」を正式に発足、代表に坂井さん、幹事2人、会員数10人でスタート。青空フェスティバルには、物産市として新潟県上川村、坂井さんのふる里青森県脇野沢村、その後には墨田区と防災協定を結んでいる栃木県粟野町、同団地の居住者の故郷の青森県木造町などにも拡がりましたが、残念ながら、景気後退と町村合併の影響で現在は地方からの参加は毎月出店の栃木県粟野町、19年間連続で年末に出店する新潟県上川村と委託販売の青森県脇野沢村と寂しくなっていますが、恒例の物産市は多くの来場者で賑わいます。
 毎月第1日曜日に開催される墨堤通り青空フェスティバルに出店する粟野町の物産は大人気で、朝早く車の到着前から大勢の人が待ち構えている程です。
 フリーマーケットは当初10年間は出店料は無料でしたが、諸経費捻出のために、年会費制と、出店の際に出店料を徴収する二つのシステムを選択できるように平成9年から変更になりましたが、有料化の影響はないようでした。


地域活性のイベント企画がイッパイ!!

 「カット倶楽部」誕生後は毎月開催の墨堤通り青空フェスティバル、親子フリーマーケット、さくらの時期に開催のさくら堤通り花まつり、5月に鯉のぼりフェア、夏休みのサマーフェスティバル、9月には夜間防災訓練、10月には下町ミニ文化祭、年末には年越しイルミネーションとイベントが増え続けています。

※墨堤通り青空フェスティバル<都立東白鬚公園・南広場>
 毎月第1日曜日の9時から15時まで開催。粟野町からの産直品、新鮮野菜の他、リサイクル品を中心にお買得品が並び、模擬店も出店。毎回、多くの人が楽しみにしています。

※親子フリーマーケット<都立東白鬚公園・南広場>
 平成15年5月から開催。すみだ鯉のぼりフェアの併催イベントとして、子どもたちに物の大切さ、親子の協働作業、お金を得ることの厳しさと楽しさを実感させたいとの思いからの企画で、毎月の恒例イベントとして定着。出店料は格安の500円。第1回の開催は墨田区やさしいまち支援事業に認定されました。

※さくら堤通り花まつり<都立東白鬚公園、隅田川神社参道・南広場>
 平成6年から始まった「さくら堤通りはなまつり」は昭和61年、東白鬚公園開園に伴い、移植されたさくらが美しい並木に成長し、区内有数のさくらの名所となり、その見事なさくらを多くの区民に楽しんでもらうために企画。毎年、青森の業者にねぶた制作を依頼し、提灯点灯とねぶたの点灯式を協賛各地域(旧上川村、旧脇野沢村、旧粟野町等)の首長、墨田区長、警察・消防署長、地元の町会長・自治会長、区議会議員等が出席して開催。地元の民謡の会や箕輪ばやし、三味線の競演等もあり、カット倶楽部会員の炊き出しや青森のホタテ焼き、ジャッパ汁(脇野沢村名物)などを振る舞い、夜桜を楽しみながらの賑やかな交歓の場となっています。花見期間中はフリーマーケット、イベントを始め夜間の提灯点灯、ゴザの無料貸出などで多くの人に喜ばれています。

※下町ミニ文化祭<梅若橋コミュニティ会館>
 平成5年から、梅若橋コミュニティ会館で地域の方の絵画や写真、手芸品、生花等を展示、絵手紙教室、折り紙教室、ホールではコンサート、民謡、日本舞踊、のど自慢大会を開催。多くの作品と出演者の発表の場として好評を得ています。

※すみだ鯉のぼりフェア<都立東白鬚公園南池>
 平成9年5月に第1回の「すみだ鯉のぼりフェア」を開催。カット倶楽部の設立時から積極的に各イベントに参加、強力な片腕として活躍していた、故児玉富雄さんと「すみだの空に鯉のぼりをたくさん泳がして、子どもたちを喜ばせたいね」と計画。新聞やケーブルテレビを通して、鯉のぼりの提供を呼びかけ、集まった鯉のぼりは300匹を超え、見事に東白鬚公園の大空を泳ぎました。喜ぶ親子の姿に接し、実現までの交渉や苦労話は吹き飛び、会員一同が全員で取り組んだカット倶楽部パワーを発揮、その活動が広く認知されました。
 警察署、消防署の協力で、はしご車体験の他、白バイや赤バイ、ミニパト等の試乗や墨田区の起震車「グラグラ号」の地震体験もあり、墨田区の「子どもの日」の最大イベントとなっています。

※すみだサマーフェスティバル<都立東白鬚公園南池>
 平成9年8月から「すみだサマーフェスティバル」を開催。第1回、第2回の開催は青森県木造町との共催の形で、青森からメロンと物産、地元の大勢関係者が参加、地域間交流で大変な賑わいでした。第3回開催以降は、カット倶楽部の事業として、フリーマーケットや公園にビニールプールをたくさん作り、子どもスイカ割り大会等の多くのイベントを企画、夏休みの親子のお楽しみの場としても大人気です。

※夜間防災訓練・避難民受入体験<都立東白鬚公園北ゲート周辺>
 カット倶楽部の大切な行事でもある夜間防災訓練と避難民受入体験は、東白鬚公園内北ゲート周辺で毎年9月に開催、今年で11回目となります。夕方から集まり、機材の搬送訓練、テント張り、炊き出し訓練等の後はテント内に宿泊、翌日、撤収して解散という徹底した訓練を続けています。一般参加者も募集、キャンプ用テントを持っている人は自分のテントを張り、ともに訓練をします。近隣区の町会から体験参加、親子参加も多く地域を超えた交流の場ともなっています。

※ すみだイルミネーション&カウントダウン&年始フリマ<都立東白鬚公園南池・隅田川神社参道>
 21世紀を迎える記念すべき1999年末から、夜は寂しい東白鬚公園にイルミネーションを点灯。そして、21世紀を迎えるカウントダウンを実施して、寒空に大勢の参加者で賑わいました。以来、クリスマスの頃にあわせて、イルミネーションを飾り、年々華やかになっています。イルミネーションは他地域の夏祭りに貸出し、他団体との協力体制も生まれてきています。年越しのカウントダウンで新年を迎え、三ヶ日は隅田川神社参道で年始フリーマーケットを開催。お楽しみ福引きもあり、年の始めの吉兆を占う人気のイベントとなっています。


カット倶楽部の活動継続の秘訣

 以上、開催行事を羅列しましたが、カット倶楽部結成から19年間、地域密着型の地道な活動を続けている。継続の秘訣は、なんといっても坂井代表の強い思いと全責任は自分が負うとの気迫にほかならないでしょう。ボランティア参加も強制型ではなく、無理をせずにできる人ができることを・・・の徹底した考えが全ての会員に浸透し、お互いにやり繰りをしながら、気持ち良く参加しています。「喜ぶ人の顔を見るのが励みでそれが嬉しい」と全員が楽しみながら活動を続けているのは稀有なことと思います。19年の歴史の中には、片腕として活動していた児玉富雄さんの急逝や支援者、協力者の逝去等もあり、辛い思いを乗り越えての活動でもあったようです。
 年会費は200円、その他の徴収等は一切なく、公的支援もない中で、イベントの際の多少の寄付とフリーマーケットの出店料、坂井夫人の全面協力に依る模擬店の売上等を開催経費に充てている現状と各イベントの準備や撤収に昼夜を分かたずに動き回る坂井さんのその努力と情熱、そして意地には頭が下がります。この執念に近い「まちを愛する思い」がなければ、絶対に継続は不可能でしょう。
 地域力が希薄になり、防犯・防災はもとより、安全に安心して暮らせるまちづくりのために活動を続けるカット倶楽部の「和と輪を広げよう私たちのまち」のコンセプトでこれからもより多くの地域の方を巻き込んでの活動を続けることはボランティア活動をされる方への大きな励みとなることでしょう。
 一人の篤い思いは人を地域を動かせることの証明でもあります。