「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載 |
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
都心の環境をミツバチを通じて感じ、街に新たな価値を創造する |
東京都中央区 銀座ミツバチプロジェクト |
活動内容 (1)活動の目的 銀座ミツバチプロジェクトとは、「銀座食学塾」、「銀座の街研究会」が中心となって企画・運営している、東京都心「銀座」においてミツバチを飼育するプロジェクトです。このプロジェクトは、生産の現場から一番離れたこの街で、自然の恵みとしてのハチミツを採る、その採れたハチミツで街と連携し、この街ならではの楽しい企画ができるのではないかと考えてスタート致しました。 『銀座ミツバチプロジェクト』の活動は、東京都心の銀座のビルの屋上におけるミツバチの飼育を通じて、銀座の環境と生態系を感じるとともに、採れたハチミツ等を用いて銀座の街と都会の自然との共生を感じることを目的としています。 ①銀座の環境と生態系を感じる―都心の環境・生態系を感じる― 緑が少ない都心の銀座において、サスティナブルな社会と環境について、ミツバチと、彼らが毎日、銀座の街の環境資源から運んでくるハチミツを通じて実感し、考えることを目的としています。 ②銀座でつくる・味わう―地産地消の銀パチ・ハチミツで新しい価値を創造する― 銀座で何かを生産する。その収穫したものから、次の何かが生まれる。 少しの蜜しか取れないでしょうけれど、この街には、その少量のハチミツを活かす力があります。私たちは、ハチミツを通じて銀座から新しい価値を創造することを目的としています。 ③取り組みを街の文化に昇華する プロジェクトで採集したハチミツを銀座発のスイーツやカクテルに用いたり、蜂の巣から採取した蜜蝋を用いて蝋燭をつくったり、活動をテーマとした舞台を企画するなど、街に新しい価値観を与え、発展的に展開することを目的としています。 (2)活動主体 活動主体は、食についてのシンポジウムを開催してきた『銀座食学塾』と、銀座の街の歴史・文化・背景を学んできた『銀座の街研究会』のメンバーを中心に、銀座のまち、食、文化に関心を持つ有志を地元の事業者を含め広く募り、構成しています。 メンバーには、バーの支配人や、スイーツのパティシエ、演劇プロデューサー、心理カウンセラー、ランドスケーププランナー、弁護士、アナリストなど多様な職種が集まり、多角的な視点でプロジェクトを企画しています。 また、サポーターとして松屋通り親交会、ガス灯通り会、5丁目ソニー通り会、朝日稲荷神社、あずま通り会、銀座教会、地元の老舗の若旦那などに参加していただき、まちぐるみでプロジェクトを推進しています。 (3)活動内容 『銀座ミツバチプロジェクト』では、プロジェクトのメンバーが力を合わせて、下記の活動を実施してきました。 ①勉強会の開催 『銀座食学塾』と連携し、ミツバチの生態やこれを育む環境、養蜂の内容や、ハチミツの活用方法や蜜蝋についてなどについての勉強会を企画・開催しました。 ②ミツバチの飼育とハチミツの採取 11階建てのビルの屋上において、3月28日から西洋ミツバチを3群3万匹設置して2か月、プロジェクトのメンバーが力を合わせてミツバチの飼育に取り組み、その数も10万匹を超え、蜜の種類もソメイヨシノ、マロニエ、ユリノキ、ミカンなどの都会の樹木から順番にフレーバーなハチミツが採れました。採ミツもプロジェクトメンバー自らの力で実施し、6月初旬までに予想の3倍、150キログラムを超えるハチミツが採れました。 ③活動の発信 銀座におけるミツバチの飼育について、テレビ、ラジオ、新聞等、各種のメディアを通じて発信しました。同時に活動の内容を地元銀座の事業者に積極的に紹介しました。 活動の成果 (1)銀座のミツバチの飼育とハチミツの採取 プロジェクトのメンバーの手とまちのサポーターの方々の力によって、ミツバチの巣箱とその周辺清掃、採ミツを実施しました。 <活動内容> 3月26〜28日 柵などの準備 3月28日 西洋ミツバチを3群購入 設置 4月4日 第1回目の採ミツ(ソメイヨシノ) 4月9日 第2回目の採ミツ(ソメイヨシノ) 4月16日 第3回目の採ミツ(ソメイヨシノ) 4月23日 第4回目の採ミツ(ソメイヨシノ、ユリノキ等) 4月30日 第5回目の採ミツ(ユリノキ、トチノキ、ナノハナ等) 5月5日 第6回目の採ミツ 40年ぶりに復活した「柳祭り」イベントへの参加 5月9日 第7回目の採ミツ 5月14日 第8回目の採ミツ 5月21日 第9回目の採ミツ 5月28日 第10回目の採ミツ 6月4日 第11回目の採ミツ 6月11日 第12回目の採ミツ 夜 ミツバチ撤去 養蜂家に来春まで預ける。 ※採ミツと採ミツの間には必ず清掃を実施しています。 (2)都心における環境の発見と情報の発信 都心はミツバチの生息・生育が可能で、ハチミツを生産できる環境基盤が存在していることを示し、これを各種のメディアを通じて全国に向けて広く発信することができ、まちと環境の新しい関係について普及・啓発することに貢献しました。 <ミツバチの生息・生育を支える銀座の環境基盤を感じる> 私たちは、各種の資料を収集・整理して、ミツバチが活動し、ミツの源となる緑地環境について知り、生息・生育を支える銀座の環境基盤を感じました。 【半径500メートル以内】 まとまった緑地はありませんが、街路樹や花壇、屋上緑化の緑など緑が点在しています。 【半径1キロメートル以内】 聖路加病院の外構や屋上緑化が、まとまった緑の拠点として存在しています。 【半径2キロメートル以内】 南に浜離宮、西に日比谷公園、北に皇居とまとまった緑の拠点が存在しています。また、東に隅田川沿川の緑や、佃のリバーシティ21に整備された外構の緑、月島市街地の街路樹などのまちの緑が存在しています。 【半径2キロメートル以遠】 南に芝離宮、芝公園、増上寺の緑、北に皇居の緑が存在しています。 <ミツバチの生息・生育で生態系の回復に貢献する> ミツバチがハチミツを採取したことにより、近隣の木々は受粉しているはずです。結果として、ソメイヨシノ他の樹木は実をつけることでしょう。次はその実を食べに小鳥が集まってきます。 ミツバチを飼っていることで、今まで見えなかった都市を支える自然環境が見えてきました。 <各種メディアへの発信> 私たちは、この取り組みについて、各種メディアを通じて広く配信し、環境への関心を高めるとともに、銀座の新しい価値の創造についての普及・啓発に積極的に取り組んでいます。 ■取り上げられたメディア一覧 テレビ・ラジオ放送日時
紙媒体の発行記録
講演会等
(3)新しい価値の創造と発展的展開 プロジェクトで採集したハチミツを用いた銀座発のスイーツやカクテルなどを開発し、事業化したことをはじめ、都心ミツバチをテーマにしたオペレッタを企画するなど、街に新しい価値観を与え、発展的に展開しています。 ①銀座のハチミツを用いた商品の開発 私たちは、できた蜜を単に食べるだけでなく、銀座のバーやクラブの方々にカクテルを作っていただいたり、パティシエにケーキなどのスイーツを作っていただくなど、銀座生まれのハチミツを銀座の中心で一緒に味わっていただき、街に新しい価値を創造することに貢献しています。 また、銀座のハチミツを用いた商品を扱う事業者には、私たちが銀座でミツバチを飼っている目的と意義を理解し、活動に同意して賛同し、これを広めていただくことを条件に、ハチミツを提供しています。 <銀座のはちみつを用いた商品> 老舗和菓子店で和菓子、地元パン屋でデニッシュ ■商品化リスト一覧 三笠会館:ハチミツ入りカクテル 4種類 4月17日より アンリ・シャルパンティエ:「銀座産ハチミツ・マドレーヌ」 6月1日より メゾンカイザー:「ハチミツを使ったデニッシュ」 6月5日より ミクニギンザ:「銀座のハチミツのパウンドケーキ」 6月5日より 銀座清月堂:「銀座のハチミツ最中」 6月9日より 銀座萬年堂本店:「ハチミツを練り込んだ浮島」 6月9日より ②蜜蝋を使った蝋燭づくり ハチの巣から採れる蜜蝋で蝋燭を作り、銀座教会でクリスマスイブに祭壇を飾るキャンドルサービスに使っていただき、同時にミツバチをテーマにコンサートを開催する等の企画をしています。 ③銀座のミツバチをテーマとしたオペレッタの企画 銀座におけるミツバチの飼育は、人とまちと環境の共生、まちの新たな側面の発見、人と人とのつながりなどを、銀座というまちを舞台に様々な切り口で語ることができます。 私たちは、来年6月に王子ホールの上演に向け、これまでの取り組みをオペレッタという形で文化に昇華するため、舞台プロデューサーであるプロジェクトメンバーが中心となって企画を進めています。 ④養蜂業の再生への貢献 日本の養蜂業は、里山の荒廃などにより蜜源となる植物の植栽面積が、昭和45年(1970年)に約65万4000ヘクタールであったものが、平成13年には約3分の1の22万6000ヘクタールに減少するなど、高度経済成長がもたらした社会・経済的要因により、かつて1万5000以上存在した養蜂家は約3500以下にまで減少しており、ハチミツの生産量も同じ期間に7400トンから2600トンへと約3分の1に減少しています。 私たちは、銀座ミツバチプロジェクトの活動を通じて、養蜂の環境学習や地域文化を醸成する効果を発信することにより養蜂業の再生と活性化に寄与したいと考え、東京都養蜂組合に加入しました。 終わりに 最初はハチミツが採れたことで興奮していた私たちも、ミツバチを飼うことで最近はその裏側の見えなかったものも見えてきました。木々が蜜を出すのは、ミツバチを通して受粉したいから蜜を出すのであり、ミツバチが集めなければその蜜は道路に滲みこんでいただけ。今回、銀座のミツバチが、毎日花粉を採集してきていることにより、近隣の樹木は確実に受粉してソメイヨシノ他の木々が実を付けはじめました。その結果、できた実を鳥が食べに戻って来る、まさに命が繋ぐ世界が見えてきたのです。 「桜の木は宴会するために奇麗な花を咲かせていたんじゃないんだ」と分かった時、ミツバチは私に大切なことを教えてくれたのです。 世話をしてきたこのミツバチは6月初旬からひと時養蜂家に預け、来年の「桜の花」の便りが聞こえてきた頃に「また銀座にミツバチが帰って来た!」となる予定です。今回、銀座が人にもミツバチにも優しい街であることが証明できたインパクトは、街の人々に心地よい衝撃となったようで、将来、銀座はミツバチが似合う街となるように、私たち自身の養蜂技も磨いていきたいと思いを強くしております。銀座の街に新しい価値が見えた瞬間でした。 |