「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載 |
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞 |
住みよい暮らしよいまちづくりを目指して―市民参加の自主性と行政との連携― |
茨城県笠間市 笠間市まちづくり教室 |
取り組みの内容 (1)発足の理由 旧笠間市の都市計画マスタープラン策定の際、自主的に関わった市民と市の都市マス担当者が中心となり、まちの問題点を市民と行政が共有し、生活者である市民の視点からみたまちづくりを実践する恒久的な組織の必要性を感じ、「笠間市まちづくり教室」を立ち上げた。平成9年7月に発足し、今年度、活動10年目を迎える。 (2)目標 「まちづくり教室」の目標は、「住みよいまち・暮らしよいまち」にするために住民自身が考え、問題点や改善方法等を提案し、市民と行政が連携してまちづくりを進めていくことである。これまでの「まちづくり教室」は、地方の人口3万人規模の都市において、住民が主体となり身近な生活課題に視点を合わせ、自分たちのできることから始め、継続的に活動を行なってきた。平成18年3月19日の1市2町の合併(笠間市・友部町・岩間町)を機に、活動の対象地域を新「笠間市」全体に広げ、友部地区・岩間地区の住民と互いに協力して、まちづくり活動を展開していく。 (3)運営 毎年、新たなグループが参加でき、かつ、既存のグループも活動を継続していくような仕組みづくりを検討し、個々のグループを一つのクラスと考え、「笠間市まちづくり教室」としてスタートした。グループ名を「○年○組」とし、活動履歴がわかるよう学校の昇級制にならい、参加1年目は「1年○組」、2年目は「2年○組」と、1年ごとに1学年昇給していく。 現在、14のグループが、グループごとに活動テーマを設定し、自主的な活動を展開している。テーマは、「河川浄化」、「商店街活性化」、「バリアフリー」など幅広く、身のまわりの問題を気の合う仲間とともに考え、自分たちができることから活動を始めている。また、まちづくり教室全体の活動として、まちづくりに関する知識や見聞を広げるため、まちづくり先進地視察研修や他市町村のまちづくり団体との交流会を行ない、1年間の活動のまとめである活動発表会やパネル展、活動報告書の作成も行なっている。 まちづくり教室全体の運営は、各グループの代表が集まる生徒会が中心となり行なっている。毎月1回の会議で必要事項を決定し、まちづくり教室全体の事業の企画立案、広報のためのポスター・チラシの作成、1年間の活動のまとめである報告書の作成等を行なう。これらの生徒会活動を通し、グループ間の連携を図っている。 取り組みの成果 (1)市民参加の拡大 平成9年度(スタート時)…4グループ19名 平成17年度…14グループ97名 「笠間を良くしたい」という思いがあれば、誰でも自由に参加できるため、メンバーは、商店主、主婦、高齢者など幅広く、さまざまな職業、年齢から構成されている。笠間市民だけでなく、他市町村居住者やかつて市民だった人も参加している。また、茨城大学の学生も参加し、学生の視点からまちづくりの提言等を行なっている。 (2)まちづくり、都市計画分野での具体的な成果 ①9年1組(環境美化グループ) テーマ「河川浄化・地域のふれあい」 子どもたちが安心して遊べる場所を確保するため、児童公園の設置を目指し、3回にわたり近隣市町村の公園視察を行なった。3回目の視察では、メンバーだけでなく、行政の担当者や実際に公園を利用する一般参加者を含む32名により視察を行なった。子どもが安心して遊ぶためにはどのような環境を整えればよいか、どのような遊具や設備が必要かなどのアンケート調査を行ない、この結果に基づき何度も検討を重ね、図面を作成した。平成15年秋には稲田駅前に「稲田ふれあい公園」が完成し、子どもたちが安心して遊べる場所となった。メンバーは、公園の完成後の維持管理にも参加し、現在もコミュニティの場として活用されている。 河川浄化を目標に、平成10年より手探りではじめた稲田川への鯉の稚魚の放流は、年を重ねるごとに定着してきた。毎年8月の第1日曜日を「稲田鯉まつりの日」とし、鯉の放流を行なうとともに、地区の「ふれあいまつり」を開催し、地元住民や子ども会の皆さんが大勢参加する地域の一大行事となった。また、花いっぱい運動として、子ども会ごとに川辺に季節の花を飾り、訪れる人の目を楽しませている。 ②8年1組(座・陶の小径) テーマ「陶によるまちづくり」 陶芸作家が中心となり、笠間焼を素材に新しい焼物文化を広めようと活動してきた。窯業団地の通りを「陶の小径」、芸術の森公園前の通りを「ギャラリーロード」と名づけ、店舗を訪れるお客さんに分かりやすい観光マップを自らの手で作ろうと、「見て」「食べて」「作って」の三つをテーマに「やきもの散歩みち」と題した観光マップを作成した。「桃宴~陶の雛展~」や「陶のオルゴール展」などの新しいアイデアを活かした事業を展開し、ワークショップ等を通して、地域の住民や訪れる観光客との交流を目指している。また、他商店会との連携により、従来の一箇所集中型のイベントではなく、市全域での企画事業を行ない、商店街活性化を目指している。 「陶の小径」整備計画では、各々に理想の道のパース(小径)を描くことから始め、道の素材の検討や灯りの模索を行った。この結果をもとに「陶の小径」周辺の道路整備やまちなみ景観形成について、行政と協働でプランを作成し、実際の道での車椅子体験を活かし、最終計画をまとめた。「陶の小径散策路整備事業」は、笠間市において都市計画の分野での市民参画まちづくりの先進事例である。また、都会にはないほっとできるような癒しの空間づくりを目指し、それぞれの窯元の個性を活かした手作り看板を製作・設置し、「陶の小径」入口周辺の花壇づくりを行なっている。 ③8年2組(人にやさしいまちづくりグループ) テーマ「バリアフリーまちづくり」 自ら作成したバリアフリーチェックシートを片手に、市内の公共・医療・商業施設150か所について、バリアフリー状況の調査を行なった。平成16年には、2年間にわたり調査したバリアフリー情報をまとめ、「ふくしマップ」として完成させた。この「ふくしマップ」を高齢者や障害を持つ方々に配布するとともに、公共施設等にも配置し、多くの方々に利用されている。 調査結果を踏まえ、笠間市への提言により、笠間公民館にエレベータや車椅子用の駐車場が設置され、保健センターの玄関ドアが観音開きから自動ドアへと改良された。また、歩道の凹凸や車道との段差の解消、市内2か所に高齢者用信号機の設置など、実際に改善が行なわれている。 (3)活動の広がり テーマ設定は、各グループの自主性に委ね、自由に行なうため、まちづくり教室全体として、多様な問題に関わることが可能となり、相互交流や情報交換により、各グループが常に新しい刺激を受け、活発に活動を展開している。今後は、新たなメンバーを獲得し、さらにグループ間の協力体制を強化し、市民主体によるまちづくり活動を実践していく。 |