「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<子育て支援活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

地域ぐるみで世代を超えて子育ち・子育てを見守りはぐくむ風土づくりをめざして
神奈川県神奈川区 神奈川区すくすくかめっ子事業(親がめ会議)
すくすくかめっ子事業の立ち上げと経緯

 子どもに関する様々な問題が取り上げられ始めた平成8年当時、神奈川区では子育て中の養育者の孤立を防ぐため、養育者同士の交流の日常化と戸外での子どもの育ちへの着目を目指した子育て支援事業に取り組んでいましたが定着には至りませんでした。そんな中、家の近くの公園ですら出られない人や育児に対する不安の強い人たちまでを支えていくには、地域の中に子育て世代のつながりの推進だけでなくまちのキーパーソンたちを巻き込んだ世代交流が生まれるシステムとして子育てを位置づけていく必要があると感じ、すくすくかめっ子事業をスタートさせました。
 大きな目標を「このまちで暮らせてよかった」と養育者にも、何十年後の子どもたちにも言ってもらえるような神奈川区を子育てが楽しい「まち」にする風土づくりに取り組み始めたのです。


親子のたまり場がはじまるまで

 そのためには、行政と区民のパートナーシップを事業の鍵としました。
 行政も横のつながりをつくり3課の情報の中から、地域で長年にわたって子どもや子育て世代に接し子育て等に関わる活動を積み重ね、いろいろな世代と顔の見える関係にある区民に理解を求めました。平成12年度、地域の各種団体、生涯学習グループ・子育て中の養育者で、「子育て連携会議(親がめ会議)」が結成されたのです。そして3課の職員と話し合いの場を重ね信頼関係を築きながら区としての子育て支援活動を進める母体としました。また、親がめ会議の活動を支援し、地域での子育て支援を円滑に推進するために、各種団体の代表からなる「子育て支援委員会」を設けました。ここでの理解、承認を得られることが、地域にすくすくかめっ子事業が浸透していくための第一歩になり大切な潤滑油になりました。
 親がめ会議は最初に、子育て中の養育者のニーズの把握及び地域の方の子育てに関する考え方を把握するためにアンケート調査を行ないました。その結果、“子育て中の人がほしいもの”及び“地域の人が取り組めるもの”の両者を満たすものとして『親子のたまり場』が挙がり、地域で取り組むために何を核とし大切にしていくのかを検討していきました。
 その中で『プログラムをつくらないことが、そこに集う人たちの自由な交流をうみだす』こと、地域にとっても肩に力を入れずに長く続けていけることを学び、シンポジウムで提案を行ないました。
 平成13年度に入り親がめ会議は、『親子のたまり場』づくりを支えてくれる「すくすく子がめ隊」の立ち上げに向けて取り組む意志のある地区・団体を募り、平行して区役所内で開催される各種団体の会議に担当職員と親がめ座長が出向きすくすくかめっ子事業の趣旨説明をして理解、協力を依頼しました。それにより、連合町内会単位の広い“面”での立ち上げの輪が拡がり、現場であるたまり場の支え手はもとよりまちの多くの人が事業に対して「知っている、聞いている」状況が生まれました。


親子のたまり場の充実にむけて

 親がめ会議は、各「すくすく子がめ隊」に自主的な活動を促すと同時に立ち上げ時の場の準備に充てる補助金を交付し、あわせてたまり場が訪れる親子・まちの人にとって居心地のいい、子育て世代の気持ちに寄り添ったものになるように、講演会・ワークショップ・情報交換のための交流会・各子がめ隊の巡回支援に取り組みました。
 そうして、地域、支え手の温かい気持ちとマンパワー(すべてボランティア)、情熱あふれる行政マンと親がめ会議の連携のもと平成15年親子のたまり場も定着してきました。そこで「すくすくかめっ子事業」の効果・課題を確認するためアンケート調査を再度行ないました。子育て世代からは「楽しかった」「友人・知人ができた」「地域の人に子どもの成長を見守ってもらえる」「会場・回数を増やしてほしい」等、子がめ隊の発展を望む声が多く、また、地域からは「地域での子育て支援に関わることが多くなった」「地域に活動に参画する人が増えた」「参加してくれる子どもの成長が喜びである」との回答が半数を超え、地域活動の活性化にも有効であることが確認されました。子育て世代は、身近なたまり場を初めの一歩として、そこからいろいろな情報を得て行動範囲を広げ、子どもを預けてリフレッシュしたり、保育つき講座での学習の機会を得たりそれぞれが自分にあった場を見つけていく姿が見られるようになりました。また、まちですれちがう親子連れに声をかけ、同じ立場の親近感からチラシを手渡し、気軽に行ける場所だからと誘ってくれたりと、参加者がたまり場の主体となっていく様子も報告されました。
 地域の支え手側は、子育て世代から若いパワーをもらって自分自身が元気になれる、自分が楽しい、力や特技が生かせる、などの立ち上げ当初には思いもしなかった相乗効果が生まれているとの声が寄せられるようになってきました。
 すくすく子がめ隊の活動が地域に浸透していく中で、神奈川区社会福祉協議会との横の連携も育ってきました。たまり場を活性化させる助成金制度への声かけ、夏休み期間の中高生のボランティア体験の場としての利用、子育て支援ネットワークづくりとホームページ立ち上げ準備などをスタートさせてくれました。
 このようにして、平成18年現在計34か所のすくすく子がめ隊が立ち上がりました。活動母体も連合町内会・生涯学習グループ・保育園・まちづくりのボランティアグループ・プレイパーク・子育てグループなどと多様になり、大切な核は伝えながらそれぞれの持ち味にそった運営がされています。
 区内をめぐると、いろいろなまちの掲示板に個性あふれる「親子のたまり場」のポスターが貼られ「あそびにきてね」と呼びかけています。
 人と人がふれあう過程では、いろいろなことが起きたりしますが、その時々にみんなで知恵と力を寄せ合い乗り越えてきました。これからも事業を振り返り、学習を重ねながら協働で進めていきたいと考えています。20年後に今の子育て世代がたまり場の支え手になっていてくれたとしたら、こんなに嬉しいことはありません。そんな、気の長いすくすくかめっ子事業です。