「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<子育て支援活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

異世代交流を通して心豊かな子どもの育成
熊本県和水町 ちびっこ夢ランド
はじめに

 平成9年、和水町(旧三加和町)が提唱した「夢世紀みかわ」のモデル地区として行政を頼らない住民総参加のムラづくりが始まった。その実現に向けて、平成10年、旧三加和町十町地区住民の手でムラづくり協議会「夢ランド十町」が立ち上げられた。この会は、集落の枠にとらわれない30代、40代が中心となり、半数は女性で占められる男女共同参画の先駆けともなるものであった。
 夢ランド十町は、モットーの「できることを、できる人が、できるときに」を合い言葉に大きな成果よりも小さな開花を心がけ活動に取り組んできた。大人が中心のムラづくりを進めていく中で、子どものための活動なら自分の力が生かせるのではないかと考えていた会員からのアイデアでこの「ちびっこ夢ランド」の活動は始まった。


「ちびっこ夢ランド」の活動内容

(1)ちびっこ夢ランド設立のきっかけ
 ちびっこ夢ランドができたきっかけは、みどりの樹の活動からである。みどりの樹は、玉名郡和水町立緑小学校(旧三加和町)の当時の校長先生の「地元の人から子どもたちに読み聞かせをしてほしい」という熱い思いで始まった読み聞かせグループである。
 メンバーに十町の者が5名いた。いろいろ雑談する中で「読み聞かせを、近くの小さな子にもしたかね」「土曜塾のような場をつくって、いろいろなにことを体験させたいね」「子どもがほっとする場があるといいね」という話題が出ていた。
 そんな思いを夢ランド十町の仲間に話した時、「よかね。してみなっせ。自分たちで思うこと、やれることをやってみらんね」との強い後押しがあり、現実のものになった。それは、平成15年の秋だった。
 活動の場所は、地域の中心部にあった空き家を使うこととした。調理場、土間、田作りの居間、家人が使っていたグランドピアノのある100年ぐらい経つ家である。
 計画当初、心配事はたくさんあったが、夢ランド十町のモットー「できることを、できる人が、できるときに」に従って、まずはやってみることにした。
 活動名は、ふれあい、チャイルドルーム、ほんわかハウスなどあったが、夢ランド十町のみんなで育てる子どもの集まりなので「ちびっこ夢ランド」と名付けた。

(2)初期の活動
 平成16年5月1日、第1回の「ちびっこ夢ランドのお知らせ」のチラシを、十町地区全家庭(約200戸)に配布した。1回目の活動内容と年間計画のお知らせとともにスタッフの募集も呼びかけた。第1回目の活動日は、5月15日(第3土曜日)、午前9時から12時まで計画した。内容は、絵本の読み聞かせ、折り紙遊び、いちご狩り、いちご大福作りであった。その後「読み聞かせ」「もの作り」「おやつ作り」の三つが活動の柱となってきた。心配しながらの出発であったが、参加した子どもは15名、協力者・スタッフは10名だった。子どもを帰した後、スタッフ一同充実感を感じることができた。
 その後、月1回のペースで、平成16年度は10回開催することができた。部活動、子ども会の行事などがあり、十町地区の子どもが全員参加というわけではないが、低学年の子どもたちを中心に楽しく活動してきた。平成17年度は、町主催の盆踊りへの参加も含め11回実施できた。

(3)活動の広がり
 活動する中で、いろいろな人の協力、支援があった。本を読むのが好きな中学生に声をかけたところ気持ちよく参加してくれ、季節に応じた本を読んでくれた。小さい子のお世話もしてくれ、ピアノも得意で彼女の伴奏で歌を歌う活動へと広がった。
 地域のおじいちゃん、おばあちゃんからは、昔遊び、地域に残る伝えなど教えてもらっている。
 夢ランド十町の役員の力は欠かせない。野外での自然体験活動では、準備や安全面の配慮など協力してもらっている。
 役場のふるさとパートナーは、心強い存在である。相談にのってもらったり、チラシの印刷などお世話になっている。

(4)季節にあった活動
 発足当初から「ちびっこ夢ランド」では、季節に応じた活動を心がけてきた。
 春は、1年間の活動でお世話になった方へ、お礼の言葉を書いた写真立てやカードを作り感謝の気持ちを表している。近所の農家の好意でいちご狩りをし、そのいちごでいちご大福を作りをして楽しんでいる。
 夏は、七夕飾りや、水鉄砲、手作りプールでの水遊び、孟宗竹を使ったそうめん流しなどをしている。おばあちゃんの中にも、そうめん流しが生まれて初めてという方もおられ喜んでもらった。
 秋は、自然にどっぷり浸っている。ハイキングでのネイチャーゲーム、クリスマスリース用かずらとりや木の実拾いなど次の活動の準備も兼ねた活動となっている。弁当を持っての楽しい一日である。地域の収穫祭にも参加した。
 冬は、地域で復活した炭焼きの体験などをしている。孟宗竹での炊飯体験やはし、おわんを作り食事をした。クリスマスリースや松ぼっくりのツリーは、思い思いに工夫して飾った。

(5)スタッフの思い
 「ちびっこ夢ランド」の当日、子どもを帰した後は、お茶を飲みながら反省や次の計画を練っている。「竹炭ペンダント作らせたいね」「あの人にたのもうか」「料理の野菜は私が持ってくるよ」と話をすれば、すぐ答えが返ってくる仲間である。
 また、「いつもやさしくしてくれてありがとう」という子どもの手紙や、「孫が楽しみにしています」という声がスタッフの活動を支えている。スタッフも楽しみながらの参加である。
 ひとりではできないことも、いろいろな人の力を合わせればできる。一緒に活動する中で、世代の違う人とも知り合いにもなった。「私も参加していいと?」と協力者が加わりスタッフが増えているのは嬉しいことである。おばあちゃんの差し入れには、子どもだけでなくスタッフも楽しみにしている。年齢の幅が広いので交流の中で学ぶことがたくさんある。


取り組みの成果と課題

(1)経験を生かしてゆったりとした気持ちで受け止めてくれる大人の中で、子どもたちは安心し目を輝かせ参加をしている。学校の行事でも積極的に活躍する子どもも出てきた。
(2)手作りおやつの差し入れやお話など高齢者の心遣いに感謝の気持ちを持つなど豊かな子どもが育ってきている。
(3)絵本の読み聞かせ、伝統行事、伝承遊び、伝統料理等の体験により上級生が下級生を世話したり、お互いの協力関係が育っている。
(4)四世代(子ども、保護者、スタッフ、高齢者)の交流によりあいさつ、後始末など声かけの輪が広まり、自然に社会規範が身についてきている。
(5)部活動に加入していない高学年や低学年や幼児、家庭的に厳しい子の居場所ができた。
(6)大人にとっても子どもの前で話したり、教えることで、自らの学びを深める生涯学習の場となっている。
(7)子どもと大人が、互いに顔見知りになり、登下校を見守るなど安心して暮らせる基盤づくりができてきた。
(8)子育て経験者のスタッフと子育て中の保護者がつながり子育て支援の輪が広がり、保護者も参加して話すことで子育ての悩みを解決する場となっている。
(9)高齢者、民生委員、食生活改善推進員等との連携が深まり、子どもの生活を見守る姿が見られるようになった。
(10)子どもの負担を少なく活動するための予算の確保が必要である。
(11)スタッフや協力者が、無理せず参加できるような人間関係づくりをすることにより、事業を長続きさせることが大切である。
(12)参加している保護者や子どもたちを、後継者として育成できるようなつながりをつくることが大切である。