「あした通信」198号掲載
ル ポ

“つながり”を大切にイベント開催〜これまでの成果を市民に広くアピール〜
新潟県加茂市 加茂生活学校
 昨年の8月、新潟県の加茂生活学校(代表・馬場道子さん)では、各種団体や地元学生とのこれまでの連携を活かして「2003かも環境フェスティバル」を共同開催した。これは、同校が取り組んできた、買い物袋持参の店頭調査や学校サポーターとして総合学習の時間の講師、商店街のサポーターなどを務めたこと、市内の子育てサークルとの連携などの活動の成果のPRと自己評価の意味も込めて開催したもの。他団体との協力関係のもと、生活学校単独でのイベント開催とはまたひと味違った形で、広く市民に訴えるフェスティバルとなった。


より多くの市民に環境問題を意識してほしい!

 加茂生活学校では「環境にやさしい暮らしヘの転換」をテーマに、5年前より、買い物袋持参運動、店頭調査の実施、学校サポーターとしての環境学習の講師、環境紙芝居の作成・上演など、環境問題に重点を置いて活動を続けてきた。
 こうした中で、メンバーの間には、「環境問題について学んできたことを、私たちだけの財産にするのはもったいない。もっと多くの市民に理解してもらうことで、活動の輪を広げていけるのでは」―という声が上がってきた。
 そこで、環境問題をより多くの市民にアピールするために、生活学校として何ができるのか、意見を出し合ったところ、「環境フェスティバル」という形で多くの参加者を集め、これまでの活動の成果を発表することにした。メンバーは早速、会場となる公民館にフェスティバルの開催を提案した。


これまでの連携を礎(いしづえ)に企画委員会発足

 ところで、同校はこれまでの活動の中で、市内の活動グループと様々に関わりを持っている。一つには、若い母親たちのグループ「家庭教育かるかも隊」との連携がある。ゴミ拾いをしながら町を歩き、環境問題や町並みの学習をしようという、かるかも隊の企画には、同校のメンバーも参加し、小学生親子と一緒に町を歩き、ゴミ問題の講師役を務めた。また、エコクッキング教室の講師やゴミの廃棄に留意した買い物指南など、かるかも隊の企画を定期的に支援する間柄であった。
 この他にも、環境問題をテーマにした公民館の「女性講座」の講師も請け負っていた。
 折しもこの頃、「家庭教育かるかも隊」や「女性講座」のメンバーたちからも、自分たちの学習の成果を発表したいという希望が出されていた。
 そこで、公民館を通じて、「環境フェスティバル」の企画運営を一緒にやりましょう、と呼びかけたところ、これまでの経緯から3団体が快諾。加茂生活学校を中心に、市内で環境問題に取り組む団体「家庭教育かるかも隊」「グリーンママ倶楽部」「公民館女性講座」のメンバーから成る企画委員会を立ち上げ、4団体が合同して「環境フェスティバル」の開催に向けて準備に取り掛かった。
 4回にわたって開かれた企画委員会では、各団体のメンバーから意見が寄せられ、まずはフェスティバルの催し物について、@各団体の複合体として行なうイベントとしよう、A「省資源、省エネルギー、ごみ半減」を共通のテーマとして、各団体の特徴を活かしたオリジナルの企画を立てよう、と決めた。かるかも隊のメンバーからは、「夏休みに実施すれば、子どもの自由研究にもなる。興味を持ちやすい内容で子どもを集めて、勉強してもらう場を与えられたらいい」という子育て中の親ならではの提案もされた。
 また、当日は託児室も設置して小学生以下の子どもを預かることとし、市民が気軽に参加できる条件を整えていった。
 さらに企画委員会では、フェスティバルの開催を市民に訴えるのに、分かりやすいスローガンを作ろうと各団体から意見を出し合い、「環境にやさしい生活を考えてみませんか〜未来のこどもたちのために行動の輪を広げよう〜」と決定。各団体のメンバーが手分けし、約1万枚のチラシの配布に街を駈け回った。


老若男女が集い、環境について考える

 こうした準備を経て、いよいよ2003年8月5日にフェスティバルを開催。生活学校では、フェスティバルのメイン行事であるシンポジウムの開催と、これまでに行なった環境学習の展示(買い物袋持参調査の資料など)、リサイクル作品づくり、環境に関する紙芝居とビデオ上映を受け持った。
 シンポジウムでは、「環境にやさしい暮らしへの転換」をテーマに討議。パネリストとして、行政、業者、消費者のほか、中学3年生が2人参加している。これは同校のメンバーが学校サポーターとして、総合学習の時間に環境問題について授業を受け持っている関係から参加してもらった。パネリストになった生徒は1年生から環境問題について受講を続けており、ゴミ分別の意識調査をした経験に基づいた意見発表も行なった。
 総合学習の時間の“教え子”である小中学生とその親たちを中心に、行政職員、一般の人を含めて、約100人が会場に詰めかけた。
 また、新潟中央短大の学生が指導にあたった、子どもたちを対象にしたリサイクルエ作教室も行なわれた。これは、幼児教育を専攻する学生のグループがかるかも隊と関係していた繋がりから、参加を依頼したもの。子どもたちは、リサイクルの楽器づくりに挑戦し、完成後は学生のギターに合わせて合唱するなど、若者ならではのアイデアに会場は和やかムードに包まれた。生活学校でも、フィルムケースや牛乳パックを利用した人形や銘々皿を作る工作教室を開催した。
 このように環境フェスティバルを開いて、異世代の人々が多く詰めかけたことで、浮き彫りになった課題もあった。ゴミ問題を取り上げるとき、同校では“ゴミの発生抑制”を強調してきたのだが、参加者、特に学校関係者からは、普段から取り組んでいる“リサイクル”の方に関心が強く傾いていたという。フェスティバルの催しやシンポジウムで、もう少しリサイクル問題を取り上げてほしかったという希望もあった。


自分たちの活動を再評価してみよう!

 冒頭でも触れたが、同校のこれまでの一つ一つの活動を取ってみれば、極めてオーソドックスな取り組みかもしれない。しかし、馬場さんが「加茂のように小さい街だからこそ、付き合いのある顔の見える他グループとの繋がりを大事にすれば、面白い企画、大きな企画でも素早く実現できるのでは」と話してくれたように、一つのフェスティバルの準備に、普段はそれぞれ異なる立場から環境問題に関心を持つ人々が関わり、それぞれの繋がりからフェスティバルには幅広い層の市民が数多く参加してきた。活動歴が長い生活学校だけに、これまでに築いてきた人脈も多い。必ずしも活動歴に比例するとは限らないが、自分たちのこれまでの人脈を活かして様々に働きかければ、思わぬほど多くの人を巻き込んでいける可能性が大きいのではなかろうか。