「あした通信」192号掲載
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母親たちの実績実り児童クラブできる
青森県黒石市 山形地区住みよい環境推進協議会
 「子どもの生活環境」をテーマに活動を進めている青森県黒石市の山形地区住みよい環境推進協議会(会長・佐藤覚治さん)では、放課後の子どもたちの居場所が山形地区にないことから推進協議会に参加している「母親くらぶ」が中心になって、公民館の一室を使って児童クラブの自主運営を始めた。1年間続けた母親たちのボランティア活動が認められ、専任職員による児童クラブに“格上げ”、この活動がさきがけとなって子どもたちが安心して過ごせる居場所づくりが市内に広がっている。


 山形地区住みよい環境推進協議会では、小・中学校が週5日制になり土曜日が休日になることから、学校・家庭・地域の立場から子どもたちにとって一番よい過ごし方についてみんなで考えようと、小・中学校の先生、同PTA、教育委員会、民生委員、子ども会などに呼びかけて、子どもの生活環境を考える集会を開いてきた。
 平成12年2月に開いた集会では「共働きなどで家に帰っても誰もいない家庭が増えている」「家の中に引きこもり外で遊ばなくなった」「学校以外の交流がなくなっている」などの意見が相次いだ。なかでも放課後の子どもの居場所が山形地区にないことが問題になり、安心して過ごせる居場所が必要だということになった。


お母さんたちが児童クラブを自主運営

 早速、「やまがた地区母親くらぶ」のお母さんたちが動き出した。放課後子どもたちが安心して過ごせるようにと、母親くらぶのメンバーで児童クラブを開設しようということになった。地区公民館の一室を使って、平成12年4月から試験的に始めた。名付けて「りんごクラブ」。小学校1年生から3年生までの児童約50人が対象で、平日は午後1時から午後5時頃まで、土曜日は8時15分から午後5時頃まで、母親たちが交代で子どもを預かった。夏休み、冬休み、春休みも開いた。「りんごクラブ」はこうして1年間、母親たちのボランティアで運営された。
 その間、専任職員による児童クラブの開設を求めて福祉事務所との話し合いが進められ、平成13年4月から専任の職員が配置される予算が付いた。今では専任職員2人体制で黒石市社会福祉協議会の事業として「りんごクラブ」は運営されている。野外活動など行事よっては、今もお母さんたちはボランティアとして参加している。
 「りんごクラブ」がさきがけとなって、児童クラブのない地区で、集会所や公民館を会場にした児童クラブが市内に開設されるようになった。いずれも専任職員が付いている。


子どもたちの交流プログラムを用意

 山形地区では小学生を対象に「あそべ塾」を開いてきた。公民館が母親くらぶなどと連携して毎月1回、土曜日の午前、公民館で開き、母親くらぶはボランティアで参加してきた。「あそべ塾」は製作、スポーツ、野外活動を通して親子、子ども同士の交流を図り、遊びのなかから仲間同士のルールの大切さやお互いの立場を理解し合える子どもたちを育成するのがねらい。
 9月には「あそべ塾」の一環として子ども祭り「山形こどもワイワイ広場」が開かれる。当日は公民館の広場に母親くらぶによる食べ物を売る店や親子のフリーマーケットが並ぶ。このように山形地区では若いお母さんたちが活躍している。このような母親くらぶのボランティア活動が、児童クラブの自主運営の原動力となった。
 また山形地区では子どもたちの交流にも力を入れている。「あそべ塾」や「山形こどもワイワイ広場」も子どもたちの交流がねらい。「あそべ塾」には中学生もスタッフとして加わっており、ワイワイ広場には黒石養護学校の生徒も出店する。
 県外との交流活動もある。今年も岩手県宮古市から海の子どもたちがやってくる。毎年、夏に山形地区の子どもたちが宮古を訪ね、冬に宮古の子どもたちがくる交流事業は今年で15年になる。
 また、りんごクラブでは、「あそべ塾」を年間行事の一つにしており、また1人暮らしの高齢者との昼食会に参加したり、高齢者との交流プログラムも取り入れている。


総合的な学習の成果を地区に還元

 黒石市では、ほぼ小学校区ごとに9地区に分け、それぞれに公民館を配し、住民の地区協議会が組織されている。特に山形地区では、学校、住民、公民館が連携しながら事業を進めている。冒頭の子どもの生活環境を考える集会もその事業の一つ。小学校の総合的な学習も学校と地区が協力して進めている。
 総合的な学習のテーマとして、今年度5、6年生は「郷土食」を地区の人たちから学んでいる。そこで同推進協議会は人探しも地区の人との交流の機会になるからと、人探しから子どもたち自身が手がけることを提案。子どもたちは郷土食を教えてくれる人を親や地区の人たちに聞いて探した。
 子どもたちにとっては集落を訪ねることにより、高齢者との交流の機会にもなっている。また地区の人たちには子どもたちに教えることで疎遠な学校に出入りする機会ともなっている。
 同推進協議会では、その発表会を住民参加で開けないかと考えている。そして子どもたちが調べ、地区の人たちから学んだ学習の成果を冊子にまとめて、地区に配布する計画を立てている。
 また同推進協議会では今年からまちづくりビジヨンの作成に取り掛かる。そのビジョンに子どもたちの声を取り入れたいという。
 平成14年2月に開いた集会では「親・先生・地域のネットワークや地域での異年齢の仲間づくりが大事だ」「子どもたちの交流がなくなっている。仲間づくりが大事だ」「子どもたちが来やすく、楽しく過ごしやすい居場所の設定が大事だ」とたまり場の必要性が出た。今後は小学生だけでなく、中学生や高校生のたまり場をどうするかが、山形地区のこれからの課題である。