「あした通信」182号掲載
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レジ袋はタダでもらえるゴミ袋?
東京都練馬区 練馬生活学校
 レジ袋を削減するための取り組みはさまざまある。その中で、スタンプ制は十分な効果を上げているとは言いがたく、マイバッグの持参も多くの生活学校の調査では持参する人は100人のうち数人程度。実際には商品価格に転嫁されているレジ袋も、「タダでもらっている」という感覚があるからこそ削減につながっていない。そこで、東京・練馬区の練馬生活学校(代表・川上クニさん)が、レジ袋の有料化で大幅削減をと対話集会を開いた。筑波大学大学院の安田八十五教授や練馬区役所リサイクル推進課、地元スーパーよしやが専門メンバーとして出席した。時はおりしも杉並区議会でレジ袋税条例が本会議にかけられることが決まった3月15日だった。


 レジ袋は、外国ではどのような扱いなのか。例えばお隣の韓国では、99年に無料配布を禁止する法律が施行されている。イタリアでは89年にレジ袋に課税、91年には石油製容器包装の使用を禁止している。日本はといえば、年間290億枚以上を消費しているのが現状だ。
 安田教授によれば、「行政主体のキャンペーンによるモラル向上方式や還元方式(スタンプ・シール方式)、マイバッグ方式などは効果がないことが明らか」で、「利用率の極めて低いスタンプ方式などではスーパー等と利用している消費者の自己満足に終わってしまうため、有料化が最も効果的」だという。安田教授の試算によれば、5円の有料化で約190億枚、10円で255億枚の削減効果があり、これらの社会的便益はそれぞれ約2,750億円、3,400億円になるという。


レジ袋=ゴミ袋という意識を変える

 同校が昨年9月に実施したレジ袋についての事前調査(対象:20代から60代までの男女600人。回収:468、78.0%)では、レジ袋をもらった後でどうしているかを質問している(有効回答数391)。「すぐに捨てる」は19人(4.9%)、「とっておいて利用する」が63人(16.1%)に対し「ゴミ袋として利用」が309人(79.0%)と圧倒的に多かった。
 安田教授は、レジ袋がゴミ袋として利用可能なことが「元凶」であり、ゴミ袋を指定袋制にするべきと主張した。東京都では推奨ゴミ袋を導入しているが、指定制ではないためレジ袋をゴミ袋として使用しても収集してもらえる。
 ゴミ袋として利用できなくし、「レジ袋は無料。買い物袋を持参するとメリットがある」という感覚から「レジ袋は有料。買い物袋を持参しないとデメリットがある」という意識への転換が消費者には求められている。スタンプ20個で100円還元していれば、レジ袋1枚は5円となる。つまり1日1枚レジ袋をもらうと消費者は1か月で150円、1年で1800円をレジ袋代として支払っていることになる。レジ袋は決して「タダ」ではない。


レジ袋はスーパーにとっても重い負担

 練馬区の榎本リサイクル推進課長は「有料化が最も効果的だとは思うが、商店街などでは区内一斉でないと不安といった声もある」とした。埼玉の狭山市では昨年11月、市内のスーパー、コンビニなどで1日だけレジ袋を配らない「ノーレジ袋デー」が実施されたが、対話集会の参加者から同様の取り組みをやっては、との意見が出された。榎本課長は、「税方式には益を誰が取るのかという議論がある。行政が税により規制することが良いことなのかという意見もある。今は有料化を前提に考えている。ただし有料化はスーパーなどが自発的にやることで条例などで規制することではない」と、流通・販売業界の自主的な改善が必要との見解を示した。
 唯一小売店から出席したスーパーは、「容器包装リサイクル法により容器包装の処理を日本容器包装リサイクル協会に委託契約しているが、委託分のほとんどがレジ袋の処理費となっている。大手スーパーでも半分程度がレジ袋分の処理費用ではないか。レジ袋は大きな経費負担になっている」と明かした。しかしその一方で、ローカルスーパーが自社だけレジ袋の配布をやめることへの不安も述べた。「区内一斉であれば、願ったりかなったりだが…」とも語った。
 多くの業者が「うちだけやめるのでは客が減る」というが、同校の事前調査で、レジ袋が有料化された場合どうするかとの質問(有効回答数428)では、「今まで通りの店で買う」が327人(76.4%)と圧倒的に多かった。
 また、レジ袋を辞退した時にはその場で5円を引いては、との提案があったが、安田教授は「それでは有料化を実感できない。お金を出して買い、ふところが痛む方式がレジ袋削減には効果的」とした。


点から線へ、そして面へ

 同校が対話集会を開催するのは、トレーの廃止を求めて実施してから約10年ぶり。初めての対話集会を経験した遊佐さんは、「業者に参加してもらうことのむずかしさを知った」という。土壇場でのキャンセルなどもあり、結局今回出席したスーパー等は1社のみだった。せっかく消費者のニーズが直接聞ける場なのにどうして来てくれないのか、といういらだちがメンバーにはあった。しかし同校では、この対話集会は第1ステップと位置付け、引き続き住民、業者が話し合える場を設定するように行政に対して要望した。また、今回出席してくれなかったスーパー等に対しては、アンケート調査の結果などの資料を持参し、対話集会の内容などを報告に行くことにしている。その際には「今回は1店のみの参加でしたが…」と申し添えるという。「あそこは来てくれたのにあなたのところは来てくれなかった」ことを伝えて次回以降の対話集会ヘつなげていこうという考えだ。
 今は「点」での活動だが、今後各地で同様の取り組みをしている団体と連携し「線」さらに「面」へと広げ、全国規模で消費者の「レジ袋ノー」の声を高めていきたいというのが同校の考えだ。2月には、練馬区をはじめ杉並区、中野区内の生活学校以外の団体とも協力し「レジ袋減量ネットワーク」を作り、レジ袋削減に向けて協議をはじめている。